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児童文学研究家 大竹聖美さん、アートンから「韓国の絵本10選」を翻訳出版

大竹聖美さん

 今年アートンから絵本シリーズ「韓国の絵本10選」が出版された。子どもたちが大好きな怪物やおばけのお話、大人も楽しめるファンタジー、そして伝統的な民話など、いずれも大竹さんが選書、翻訳、解説した。

 今年4月から東京純心女子大学こども文化学科専任講師、白百合女子大学非常勤講師として、韓国児童文学を教えている。

 朝鮮の児童文学との出会いは小学校高学年の頃、図書館で日本の昔話の横に置いてあった「朝鮮民話集」を見つけたことだった。「幼いなりに引かれるものがあって。素直に楽しみ、好きだと思った。高校時代も朝鮮美術に惹かれた。周りのみんなが欧米の美術が良いというとき、私は朝鮮の美が気になっていた。何かアンテナに引っかかるものがあったのでしょうね」。

 大竹さんによると、80年代頃までは日本で普通に生活していて、朝鮮や韓国のものに触れる機会がほとんどなかったという。88年ソウルオリンピックの中継を見て、「時差もない隣の国」の存在に大きな衝撃を受けた。「なぜこんなに近いのに、こんなにも知らないのか」と。イギリスやドイツのお話は知っていても、朝鮮半島のそれについてはほとんど何も知らなかった。ハングルという文字を持ち、優れた文化を持っていることすら。

 その後、90年に出版された松居直・李相琴共訳の「山になった巨人−白頭山ものがたり」と「半分のふるさと―私が日本にいたときのこと」(福音館書店)の2冊が留学のきっかけとなった。後者の李相琴氏(元梨花女子大学教授)の自伝には、戦前日本で暮らし、戦後帰国、苦難の時代に2つの国で生きた母への思いが込められている。児童文学を専攻した彼女が、近代日本児童文学と朝鮮の関係、さらには朝鮮やアジアの児童文学に関心を持つようになったのは自然な流れだった。

 大竹さんがソウルにいた98年からの6年間は、南朝鮮の文化が変化していく時期でもあった。80年代に学生運動を経験した「386世代」の作家たちと出会い、子どもの文学に取り組む姿勢とバイタリティーに魅了された。

 「プリチャッキ(根っ子探し)」と呼ばれる民族文化のルーツを探る丹念な作業に情熱を傾ける作家たち。意欲的な作品を創作する姿に、勢いを感じ、感動を覚えた。それは、「日本の文化が商業的なものに押されて根無し草のようになりつつある時代に学ぶべきもの」だという。

 朝鮮の子育て文化に触れては、胎夢や産後の風習など「土着の豊かな思想」に魅せられた。「北や在日についてはまだまだ知らないことばかり。これから機会あるごとに学んでいきたい。これからも絵本を通して朝鮮の文化や心を日本の人に伝えたい。在日の子どもたちが絵本を通じて祖国の文化に触れることもうれしいですね」。いつか消えてなくなる流行物ではなく、アンデルセンやグリムのように、「良い訳文で、作品をもって隣人への理解を深めてもらえれば」と話していた。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2004.12.22]