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高麗人参余話(63) 連載を終えて

 昨年の4月から始まり1年9カ月の比較的長い連載になった「高麗人蔘余話」も今回が最終回となった。

高麗人参6年根(水人参)

 私は3年前、福島県会津磐梯山の麓に広がる朝鮮人蔘畑を見たとき、この山奥にも朝鮮半島と日本の長い文化の交流があってこの地で朝鮮人蔘が栽培されていたという事実にとても感動した。それからは会津に行くたび人蔘畑に赴き、写真を撮りながら畑の様子を見て歩いた。田圃の中に広がる人蔘畑の黒いテント(寒冷紗)、その中の不思議な明るさ、掌を広げたような五枚の人蔘の葉、おもしろいことに1年に一枚ずつ増えて行く複葉。人蔘は春先に芽を出し、6月頃には花を咲かせ青い実を付け、7月頃には赤く熟し、9月の終わりから10月にかけて枯れてしまう。一方、人蔘の根は4年から6年にかけて土の中で大きくなりながら成長する。その様子を楽しく観察した。

 会津娘醸造元高橋庄作酒造店の高橋さんは3代続く人蔘の仲買人で、収穫した人蔘の加工の実際を見せてもらった。高橋さんの家の庭には5、6本の人蔘が自然に生えていて、いつもそれを観察しながら人蔘栽培や加工の苦労話を聞いた。栽培人蔘の畑で出会ったお百姓さんやJA日本人蔘販売農業協同組合連合会(日蔘連)の役員の方々にも貴重なお話を聞かせていただいた。また、会津若松に根付いた薬膳料理、「古川」の蔘鶏湯に舌鼓を打った。

 身近で人蔘に接するようになってから人蔘のことをもっと知りたくなり資料を集めた。面白いもので興味が向くと人蔘の情報が次から次に自然と飛び込んでくるようになり、この数年私の机の周りは人蔘の本や製品など資料でいっぱいになっている。

会津の美しい景観とマッチする人参畑の黒いテント(寒冷紗)

 私の身の回りの人でもみな人蔘は貴重で体によいということは何となく分かっているが、果たして人蔘をどのように飲めばいいのか、人蔘の何がいいのか、本当に効くのか、高血圧にはよくないのではないかなど分からない事や疑問に思っていることも多い。興味をもったついでにこれらの疑問に答えるような解説を書いてみようと思った。

 連載をしていた今年の4月、父が脳溢血で倒れ入院した。九月の末に息を引き取るまで家にあった紅蔘や韓国の親戚が送ってくれた紅蔘の粉を服用したが人蔘は父の病状の改善に大きく役立った。後遺症の克服にも、体のむくみを取ったり、お小水の出をよくするのにもよく効いた。父の看病をしながら家の中でも家族が煎じた人蔘茶を飲むようになった。

 人蔘にはさまざまな効用がある。人蔘を飲んで病気が治り、あるいは改善されたという話は実に多い。寝たきりの病人のジョクソウに紅蔘の粉を撒いてやったら治ったという話も聞いた。本当に不思議である。人蔘を服用することで健康を保ち、病気を治す。朝鮮民族の生きた知恵である。

 人蔘は太古の昔から白頭山の麓や三千里錦繍江山至る所の奥深い山々に秘かに育ち、私たちの先祖に素晴らしい恵みと幸せを与えてくれた。まさしく天が恵んでくれた最高の贈物である。数千年にわたり愛されてきた高麗人蔘はこれからも末永く人々の健康を守り続けることであろう。

 連載を終わるにあたり今までご愛読いただいた読者の皆様と連載の機会ばかりでなく貴重な助言を頂いた朝鮮新報社編集局の皆様に感謝したい。(完)(洪南基、神奈川大学理学部非常勤講師)

[朝鮮新報 2004.12.24]