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文化2004年を振り返る 東アジア結ぶ平和の願い

人類の共通の宝−高句麗壁画古墳世界遺産登録、文化と歴史の共通性確認

ユネスコ世界遺産委員会でにこやかに記念写真を撮った北南政府代表。
ユネスコ親善大使の平山郁夫さんも高句麗壁画の世界遺産登録に惜しみない協力を寄せた

疾駆する騎馬武者

 朝鮮半島での今年の朗報は何と言っても6月28日から中国・蘇州で開催されたユネスコ世界文化遺産委員会で、朝鮮の「高句麗壁画古墳」が世界文化遺産に登録されたことである。これは朝鮮だけでなく、人類の貴重な文化遺産を後世に残していく国際的な価値を認められたという意味で大きな意義をもつ。

 世界遺産登録が決まった直後、北と南の両団長が何度も感激的な握手を交わした。李儀夏・朝鮮政府代表団長は「高句麗壁画古墳は朝鮮の誇りであると共に人類共同の貴重な宝である」とのコメントを発表。また、許権UNESCO韓国国内委員も「国連の場で分断国家の南北朝鮮が、共に一つの目標に向かってこんなに協力を惜しまず頑張ったことがあっただろうか」と目を潤ませながら感激を口にした。「中国は巨大な発展ぶりを見せている。ロシアも着々と力をつけている。日本の軍事大国化も不気味だ。その中にあって、朝鮮半島が一つになって、民族の英知をあわせるためにも、わが民族の誇るべき高句麗文化を共に尊び、学び、守っていくことは最重要課題である」と述べた。 離れ離れになった朝鮮民族を一つにする「高句麗壁画古墳群」の世界遺産登録。このニュースを世界中で暮らす朝鮮民族一人ひとりが、心に刻んだであろう。南北の統一はもとより、統一の基盤となる文化と歴史の共通性を確認するためにも、高句麗文化への関心は来年以降もいっそう高まっていくだろう。

 中国やパリを頻繁に行き来して、朝鮮の「高句麗壁画古墳群」の世界遺産指定に心血を傾けた日本画家・平山郁夫さんも、そのプロセスを知っているだけに手放しで喜びながら、「文化は平和によってのみ可能であり、文化こそ平和を生み出す力だ」と語った。

 日本最初のシルクロード・高句麗文化の到達点、飛鳥寺の住職も、「飛鳥寺は聖徳太子の人間形成や仏教面の指導に携わった高句麗の高僧・慧慈が住した由緒ある寺。伽藍配置も平壌の清岩里廃寺の一塔三金堂様式をモデルにしたもの。古代日本に豊かな恵みをもたらした高句麗の壁画古墳が世界遺産に指定されたことは、本当に喜ばしいこと」だと述べた。

 さらに住職は、「まさに高句麗文化は日本文化の源流であり、古代日本の黎明期に多大な影響を及ぼした。その古墳壁画は日本古代史の貴重な証人でもある」と指摘しながら、今後の日朝関係の改善にも強い期待感を寄せながら、「日朝間の平和交流こそ、高句麗の先人の仏恩に報いる道だと思う」と語った。

家族の歴史映す−ドキュメンタリー映画「海女のリャンさん」

 今年、在日同胞の間で大きな話題を呼んだのは、解放前、済州島から日本に渡り、今、大阪で一人で暮らす元海女、梁義憲さん(88)の生活を記録した長編ドキュメンタリー「海女のリャンさん」。

 日本各地95所以上で自主上映され、約8500人の観客たちが熱い涙を流した。

 苦難に満ちた朝鮮近現代史。女性たちの苦闘も並大抵ではなかった。時代との格闘の中で、外敵からヒナ鳥を守ろうとする母鳥のような闘争心なしには生き抜くことが困難だった。映画には激しく、苛烈な時代を生きた朝鮮女性の闘いの一生とおおらかな愛が描き出されて、試写会では感動のあまり「泣きっぱなし」だったという人も多い。

今年88歳の米寿を迎えた梁義憲さん

4.3民俗クッは同胞らの大きな共感を呼んだ

 映画には梁さんの35年前を記録した白黒の16ミリ映画フィルムが活用されている。朝鮮通信使の研究者、辛基秀さんがカメラマンの金性鶴さんとともに当時、梁さんに2年間密着して撮影した貴重な映像だ。この映画は文化庁記録映画大賞も受賞。日本の各大学での上映の動きも広がっており、日本人ファンの間でも、「教科書では分からない血の通った日朝間の現代史が学べる」と好評である。

 東京都足立区でこの映画を観た埼玉県川越市の田中健一さんは「今、日本のメディアは表面的に朝鮮、韓国を取り上げるばかり。朝鮮を敵視する風潮が強い中で上映された意義は大きい」と指摘しながら、「今の在日コリアンや北朝鮮をめぐる問題の本質は、やはり、日本の植民地支配や米国の介入があると思う。まだ戦争は終わっていない。その本質を明らかにする視点を与えてくれた」と高く評価した。

 日本のメディアが伝える一連の拉致報道は一元的で、多分に感情的であり、深い歴史的観点に欠ける。そればかりか、異論をさしはさむのを許さない危険な風潮が広がり、好戦的情緒は最高潮に達している。その雰囲気は今後も続くだろうが、朝・日問題の真の理解のためにも、この上映運動の輪がよりいっそう広がることを期待したい。

「4.3事件」56周年

 一方、今年4月には、東京と大阪で済州島4.3事件56周年講演と済州民俗クッが同実行委の主催で開かれ、2千人以上の同胞が詰めかけた。今回の4.3民俗クッは冷戦時代の傷を負ったまま、虚空にさまよっている亡霊たちを慰め、亡者は生者たちの中で息を吹き返し、蘇り、民族の和解と統一を実現しようとする歴史の前に立っていることを実感させた。ある同胞は「事件の犠牲となった多くの島民が願っていた民族の統一めざして南北、在日が力を合わせていかねば」と涙を拭いながら語っていた。

 ブッシュ政権による世界戦争の危機、朝鮮半島への攻撃の危機が忍び寄る時代に、南北が一つの文化を確認し、一つの民族として平和と和解、統一のために力を合わせることの意味はとてつもなく大きい。(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2004.12.27]