〈第6回全国高等学校女子ウエイトリフティング競技選手権大会〉 北海道朝高金恵娟選手、高校新記録で優勝 |
第6回全国高等学校女子ウエイトリフティング競技選手権大会(富山県滑川市総合体育センター、18〜19日)で、金恵娟選手(北海道朝高3年、+75Kg級)は一人「別世界」での試技を淡々と続け、格の違いを見せつけた。こと得意のクリーン&ジャークでは、全国から選ばれた6選手が100Kgを待たず試技を終える中、金選手は第1試技で102.5Kgを挙げ、第2試技では自身が持つ高校新記録を0.5Kg上回る107.5Kgを成功させた。「俺ウエイトやめようかな…だって金さんすごいんだもん…」。ある日本の男子選手がこぼした。選抜大会、選手権大会を2連覇、4連勝し高校女子ウエイトリフティング界を独走した金恵娟選手。他の追随を許さないその強さを解剖する。 強さの秘密
最大の特徴は土台である強靭な下半身にある。太もも、尻、裏ももにかけての、スクワット時に有効な筋肉が非常に発達している。MRI(磁気共鳴映像法)で両ももを見たとき、むだのない筋繊維には思わず自分で「惚れぼれ」したと言う。 この下半身を築くために、200Kgのバーベルを掲げスクワットをこなす。これは頑丈なシャフトがしなるほどの重さだ。
そしてバランスの取れた上半身。元来上半身は弱い部分であった。たび重なる股関節痛から練習ができない時期があり、その間に集中的に鍛え上げたおかげで競技時にぶれない体ができ上がった。金選手は前回大会から約3キロの増量で今大会に臨んでいる。この間、下半身のトレーニングができなかったことを考慮すれば、上半身だけで3キロの筋肉を手に入れたと言っても過言ではない。 しかも金選手は最先端のテクニックを持つ。北南朝鮮から仕入れた「半島最強のテクニック」だと金太壌コーチは教えてくれた。「日本の水準は世界から20年遅れている」(金コーチ)が、金選手に限っては世界レベルから見ても遜色はない。美しいフォームはこの技術からきているし、「技術を効率的に使えるのは下半身があってこそ」だと言う。 金選手は週五日、一日4時間の練習をこなす。春も夏も正月も休むことはない。「ウエイトに関しては100%の努力なくして栄光はない」(金コーチ)からだ。 コーチと両親
練習で壊れた筋繊維を癒し、身体を作るのにバランスの取れた食事は欠かせない。金コーチは「僕らにとってカレーライスなんて飲み物。強い身体を作るのに一日5000キロカロリーの摂取を義務付けています。これも練習」と言う。食事を作るオモニの芮富子さんは「大変だけど最近はやりがいを感じる」。 彼女の強さはメンタル面にもある。 「金太壌コーチは恵娟にとって精神的支えであり、絶対的存在なんです」と父の金甲烈さんは言う。 外から見た2人の関係は師弟というより親友の方がふさわしい。「試合前の不安も金コーチの声を聞いただけでなくなるほど」信頼は厚いと芮さん。 金選手がのびのびとウエイトに打ち込めるのも、金コーチと両親の支えがあってからなのだろう。 影に徹し、苦悩に打ち勝ち、娘を応援する両親と、金選手を支える部員、監督なくして金メダルはなかった。 金選手にとっての一番の喜びは、「同胞たちに勇気と力を与えていると言われること」だと語る。 ついて来るもの 金選手は今後、大学に進学しウエイトを続けると言う。数ある推薦の中から「一番いいところに行く」と言った。 芮さんは「ここまで来たからにはやめさせません」と笑う。 金選手にとってウエイトとは「後からころころついて来るもの」。 勉強もおろそかにしない彼女の成績は最優等。妹の誕生日にはケーキを焼いたりする一面も持つ金選手の背後には、もっと大きなメダルが控えているのかも知れない。(鄭尚丘記者) [朝鮮新報 2004.7.22] |