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夏のバスケットボール学生大会を振り返る

 夏季各バスケット大会が終了した。連日夏日が続くなか、練習に励んできた選手たちはその実力を存分に発揮し、熱戦を繰り広げた。初級部第2回ヘバラギCUP、中学、高校学生中央大会で見事優勝した各チームの監督たちに、その勝因を聞いた。在日バスケの底上げのために出し惜しみなく話してくれた。今後、冬季大会に向けて、各チームの参考になれば幸いだ。 

【初級部男子】
 名古屋初級・元明基監督 楽しみながらも緊張感を保つ目標を立てた。今年で4回目の参加となる大会で必ず優勝しようと誓い合った。人より2倍、3倍練習してこそ、いいプレーヤーになれると信じて練習に励んだ。アウェーからの参加だが、関東から持ち出されたことのない優勝CUPを持ち帰れてうれしい。名古屋駅では父母たちが凱旋を祝賀してくれた。毎年宿泊先を提供してくれる東京第3、後方で協力してくださる父母の方々にも感謝している。冬のCUPも必ず名古屋に持ち帰りたい。

【初級部女子】
 東京第3初級・康哲敏監督 リベンジという言葉を何回口ずさんだだろう。相手にではなく、苦しい時、逃げ出そうとする自分自身と戦うために汗も涙も流した。今大会を通じて幼いなりに逆境に負けない強いメンタリティーを体得し、団結力も高まった。正直、前半11点のビハインドは苦しかった。しかし監督、選手ともどもあきらめることなく、失敗を恐れず、勇気を持ってプレーできたこと、日常生活において辛い時こそ何事にも積極的に、元気いっぱいに取り組む姿勢を持つようにしてきたことが勝因と言える。自身、大会事務局も担いながらの今回の成果は、父母スタッフの物心両面の応援なくしてありえない。温かく、そしてすばらしいスタッフに心底感謝している。以後、攻撃は最大の防御なりをモットーに、冬の選手権でも子どもたちがいっそう全力を出しきれるような指導をしていくつもりだ。

【中級部男子】
 京都朝中・金政浩監督 今年度は京都府私学大会や近畿地方新人戦などで優勝もした。この選手たちなら今大会は必ず優勝できるという自信はあったが、勝負の世界は何が起こるかわからない。当然不安な面もあった。スポーツの世界では、勝って当たり前と思われることが実は一番厳しい。3年間の練習で、中学生以上の気合い、声、精神力を養ってきた。団結力、互いの助け合い、そして何よりもコーチをしてくださった李玉善、金敏子先生をはじめとする周囲の方々の応援の結果だと思っている。

【中級部女子】
 東京第4・朴誠一監督 1点差で惜敗した昨年度決勝後から1年間、高いレベルの試合も見学し卒業生との練習試合も重ねてきた。地味だが基礎練習をしっかりとやってきたこと、キャプテンを中心にみなが練習に真剣に取り組んだことが今回の勝因だ。向上心も高まりセットプレー等は自分たちが作り出すので、ベンチもわからない(笑)。そんな子どもたちだから、どんな高い要求を出しても決して弱音を吐かなかった。予選から、とくに千葉との試合で苦戦したが、優勝するためには勝利に対する執念、気合いが必要だという初心を思い起こせた。つねに何かを実践しようとする姿勢に自分自身も学ぶことがあった。中体連、関東選手権でも優勝できるよう、今後も練習していく。

【高級部男子】
 東京朝高・李成哲監督 一言で言うと、必然的なリベンジ成功とでも言おうか。今年度インターハイ予選で310校中64位という本校新記録も達成したし、新体育館、新リング設置、例年以上のOB、OGの積極的な協力もあった。昨年度の敗因はメリハリのない日常生活にあった。今年はクラブと朝青生活をしっかりと組み合わせ、小中学生大会のサポートや活動を年間を通して行い、東京の常勝校との練習試合も重ねてきた。そして何よりも選手たちの中でバスケットを愛する気持ちが強まったことが、監督としては勝敗よりもうれしい。

【高級部女子】
 大阪朝高・金采玹監督 3年生は最後の大会で気合いと技術を出しきり、一丸となって必ず優勝しようと誓った。OG、父母の協力、そして前監督の康静愛先生の協力もあり成し遂げた優勝だった。今年度から指導を任され府代表の日本の高校で指導を学ぶなど、いろいろと取り組んだ。新チーム体制で今後いっそうレベルUPをはかろうと思う。

各大会事務局講評

▼初級部
 開催期間、同じ会場で行われたこともあって、観客数は過去最高だった。大塚製薬から飲料水の提供もあった。大会前にコーチングクリニック、審判講習会を行い、ホイッスルの質も高まった。動員した中学生も迅速に動いてくれた。千葉、東京第5の女子チームも参加し、各部トーナメントごとに熱戦を繰り広げた。オールコートでの試合となる最終日、男子名古屋初級の初優勝は大変喜ばしかった。女子1部決勝、東京第2対東京第3の試合は前半終了時には十中八九東京第2の勝利を確信したことだろう。しかし東京第3が後半から執念でオールコートプレスをかけ、ターンオーバーからの速攻、エンドからのセットプレーなどで得点を確実に重ね逆転優勝した。課題点は、男子チームではハンドリング技術の熟練、シュートフォームの修正、ゾーンディフェンスよりもマンツーマンで試合に挑んでもらいたい。女子チームではジャンプシュートの習得、1対1技術の向上、ヘッドアップからの強いパスさばきを習得してもらいたい。ミニ連など日本の大会で、関東、全国レベルに到達するよう、各校の指導法も研究すべきだろう。

▼中級部
 男子部門、ベスト4に進出してきたのは、神戸、中大阪、京都、神奈川。前評判通りの高校生顔負けのスピードあふれるプレーの京都朝中の圧勝だった。

 女子部門、東京朝中、東京第四、東京第一、神戸朝中がベスト4に進出した。

 男子チームでは、頭を五部刈りにしているチームがあったが、本人たちいわく、心身ともに真剣にバスケに取り組んでいることを表しているのだという。女子は東京第4が着実に得点を重ね優勝したが、当たり負けない体と強い精神力を持つチームこそ勝利を手中に収めることができると感じた。

 中学生らしいファイトいっぱいのプレーは、今後が期待される。課題はイージーミスをなくすこと。とくにリング下のシュート、パスミートをしないがため生じるパスミスが目立った。スナップをきっちりとする手首、ジャンプのためのひざ作り、パススピードと精密さを高めるべきだ。

▼高級部
 春の選手権と同じカードとなった男子決勝。大阪のスタートダッシュから始まったが、東京が第2、第3クォーターでプレスからのターンオーバー、スチールからのファーストブレイク、セットからの3ポイントを的確に決め、リードオフマンを中心に終始攻めに出て見事リベンジを果した。大阪のゾーンに対する東京の攻めも見たかった。

 3校での争いとなった女子では実力が均衡し、三つ巴の激戦となった。ポイントは予選を1位で通過することだった。大阪が初めて神戸に勝利し、1位通過。決勝は大阪対神戸。各自の役割をしっかりとこなし、着実に得点を重ね、リバウンドを制した大阪。底力を発揮し、11点差を追い上げた神戸。最後は大阪が3ポイントを決め優勝した。3ポイントの恐さを痛感するゲームであった。

 女子の参加は3校と例年に比べ寂しかったが、各地方協会は高校バスケ部再建のために協力すべきだ。

 高体連や日本の公式試合での吉報を聞きたい気持ちもあるが、中央大会には言葉で表せない独特の味があると感じている。

「レフェリーの目」

 何と言っても不必要な笛を吹かれないようにすることだ。

 ジャンプストップをもっとしっかりとし、ヴァイオレーションをとられないようにすること、ナイスパスからのトラベリングはがっかりするものだ。もう一つ挙げるならば、日常の練習中にファウルに対する理解、ファウルとプレッシャーの微妙な違いを選手たちに教えたい。何でファウルなのか、そうでないのか理解できるよう、コーチが笛をもっとしっかりと吹き、教えるべきだ。

 審判自身もルールを良く理解し、ジャッジに対する責任を高めてもらいたい。例えば3秒ルール、24秒ルールの改正をしっかりと理解している審判が何人いただろうか。実際ミスジャッジのため、損得も生じたようだ。一般審判は地域の審判講習会に参加したり、地方ごとに審判講習会を開催する必要性がある。少なくともしっかりとしたディレクション、リード、トレールの6分割分担くらいは守りたい。各チームのベンチワークもほどほどにするべきではなかろうか(ベンチテクニカル対象行為もあった)。中体連で常勝している強いチームのコーチやプレーヤーは、ルールのノウハウを知り、どの角度からもシュートを的確に決めてくる。都道府県大会、全国大会出場のためには、年間を通じた地道な指導、練習を要すると痛感した。

 初、中、高の大会を通じて、本ページを掲載し始めた昨年と比べ、全体的に雰囲気が向上した気がする。選手たちのマナーも良く、試合中に出す声もウリマルであったことはとても喜ばしい。マナーなくして技術向上はないといっても過言ではなかろう。実際、技術が高い選手たちと会話をすると、言葉使いも礼儀も正しいし、輝く目はとても魅力的だった。

 一方、大会終了後の敵、現場の「ゴミ」はどうであったろうか。本紙を通して呼びかけたが、初級部大会終了後のゴミ処理作業は行わなかった。ゴミがなかったからである。協力をしてくださった、各チームの父母のみなさんに感謝します。一方、中央大会では相変わらず。さ細なことかもしれないが今後の課題の一つである。

 ほとばしる汗とともに喜びや悔し涙も流し、さまざまなドラマも生み、それぞれの思いを胸に刻みこんだ夏の大会が終了した。数多くのプレーヤー、観客たちは、「バスケっていいな」「スポーツっていいな」と心底思えたことだろう。

[朝鮮新報 2004.9.30]