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「トゥーランドット」の王子さま

 「エンヤままよ!」と、引き受けた連載も最終回を迎えた。時間に追われる毎日の中で、月1(計6)回書くのは大変だった。現代は、ペンを持つことなく他者に自分の意思を伝達する手段は山程ある。私は、人様に読んで頂く文を書く辛さを身をもって体験した。
 私の日常では、考えをまとめて書く必然性は全くない。この連載で私は何度死にそうになったことか! まるでプッチーニのオぺラ「トゥーランドット」で、姫君の難問に苦しむ王子状態−(答えなければ終り!)だった。

 良かった点は書くことにより、非日常を体験できたこと。私自身、自分の思いや考えが見えたのは大変有意義だった。

 音大を出て早2年。8月からは、よみうり文化センターで講師をする傍ら、ボイストレーナーとして、後進の指導にもあたっている。音楽との付き合いが増える中、つねに「在日」である自分を意識せざるを得ない立場に置かれる。音楽畑では特にそうである。私は日本と南北朝鮮ミックスの「在日流」で接している。在日の歴史も来年で100年になるという。その半世紀以上は苦しみの連続であり、常に民族心を揺さぶられながら生きてきた。今、その栄養素は日本の土壌にタップリ浸透し、大きな森となった。その森をもっと大きくするための期は熟している、と思うのは私だけであろうか。在日の歌声、舞、音、言語…。私は「在日らしさ」をもって音楽を奏でたいと思う。微力ながら、一天の小さな点になり志をともにする人々と手を取って行ければと願って止まない。チンシムロカムサハムミダ。(金桂仙、声楽家)

[朝鮮新報 2004.12.20]