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〈同胞法律・生活センターM〉 相続問題@

 ここ数年、一般人の生活上に起こりうるトラブルについての法律上の判断をテーマに笑いを交えてわかりやすく伝えるスタイルのTV番組が流行っています。そういえば最近では「訴えてやる」というキャッチフレーズの番組の司会者が訴えられるという、笑うに笑えない話もありました。

 それはさておき、そういった番組でも相続に係わる問題はよく採り上げられます。実際、当センターが受ける相談の中でも相続問題は最も多いジャンルのひとつとなっています。

日本の人とは違う

 当センターへの相続に関する相談が多い原因としては、現に相続を巡るトラブルが多いということもあるでしょうが、それ以外にも在日同胞の場合は相続に適用する法律が必ずしも日本の法律とはならないということ、また相続人の特定、つまり誰々が相続権を持つのかということの確認が、戸籍を調べれば簡単にはっきりする日本人のようにはいかないということが挙げられるかと思います。

 日本では外国籍者が被相続人(亡くなった人、もしくは法律上そうみなされた人)の場合は、相続についてはその人の本国の法律を適用することが「法例」という法律で定められています。在日同胞の場合、朝鮮半島の分断状態が続いていますので、この本国法がどうなるのかという問題をまず述べなければなりません。

 日本の多くの判例(裁判所の判決例)、また学界の通説は、朝鮮半島のように国が分断された状態にある場合はそのどちらの方により密接な関係を有するのかということによって、適用する法律が決まるとしています。

 なお、密接な関係についてはその人の帰属意識といった主観的要件、肉親や行き来といった客観的要件とが総合的に判断されることとなり、必ずしも外国人登録上の国籍欄の表示が「朝鮮」か「韓国」か、で単純に判断されるものではありません。

 そして、やっかいなことに本国法を共和国法とする人と韓国法とする人により、それぞれ適用する法律が異なります。

本国法との関係で

 本国法については、共和国法を本国法とする人の場合、共和国では対外民事関係法という法律により基本的に日本の民法を適用することになっています。社会主義システムに基づいた法律をそのまま適用するのは在日朝鮮人の実情に合わないことを配慮してこのようにしているわけです。

 ですから、共和国法を本国法とする人の場合は、相続人の範囲や法定相続分、つまり言葉は悪いですが法律で保障される各相続人の「取り分」は、基本的にテレビ番組や書店で売っている一般の書籍に書いてある通りと考えて良いでしょう。

 一方、韓国法を本国法とする人の場合は韓国民法がそのまま適用されます(ただし、日本にある不動産の相続登記などの手続きは日本法に則った手続きとなります)。

 韓国民法と日本民法では相続規定において相続人の範囲や相続分等においていくつかの違いがあり注意が必要です。どのような違いがあるのかについては、次回以降をお読みください。

 相続人の特定については本国の官憲の発給する証明書で確認することが基本となっていますので韓国戸籍に登録されている人は外国人登録原票記載事項証明書に加え、戸籍謄本の添付を求められます。

 一方、多くの「朝鮮」表示者のようにそういった本国での登録がなされていない人の場合でも、外国人登録原票記載事項証明書に加え、申述書や総連の発給する相続証明書等を添付することによって手続きが可能ですのでご心配には及びません。

 ただ相続分等についてはあくまで法律でその権利が認められているということです。相続人間で遺産分割をどのようにするかについて話し合いで決まれば、誰がどれぐらい相続しようが良いわけで、合意に至らず裁判所の判断に委ねるような形になった場合はこの法定相続分を基本にして処理されるということにすぎません。相続人同士で仲良く話し合って決まればそれにこしたことはないということです。

 争いを避けるための遺言等についても次回以降をご期待ください。

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[朝鮮新報 2005.3.8]