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〈同胞法律・生活センターQ〉 離婚全般A

 Q 結婚して10年になります。夫は自分の気に入らないことがあったりイライラがつのると、なにかと私のせいにします。そのため夫婦喧嘩が絶えず、そのたびに殴る、蹴るなどの暴力をふるいます。家計は夫が管理しており、ここ数年は生活費もほんの少ししか渡してくれません。余分にくれるよう頼むと、「誰のおかげで食べられると思っているんだ」とすごい剣幕で怒鳴り、手を挙げられることもしばしばです。このような夫から逃れたいのですが、家を出たところで生活のめどが立ちません。どうすればよいのでしょうか?

国が迅速な取組を

 A 喧嘩の原因がなんであれ、夫から妻への暴力は絶対に許されるものではありません。また、どんな理由があろうと殴られて仕方のない妻など存在しません。一歩外に出て、よその女性を殴ればそれはただちに犯罪として処罰されます。

 しかしながら、朝鮮半島においてもまた日本においても、夫から妻への暴力は夫婦喧嘩として軽く扱われたり、他人が介入してはならないものと理解されてきました。実際のところ、警察の対応も夫婦間の問題ということで関与してきませんでした。欧米でも近年までは、夫が妻を殴るのはしつけとされており、夫の妻にたいする「懲戒権」を認めていた国もありました。とりわけイギリスでは「親指の原則」という慣習法があって、男性の親指よりも細い棒であれば妻をいくら殴ってもそれは罪に問われませんでした。

 1990年代に入り、世界的な女性運動の高揚の中で、このような家庭内でおこる女性への暴力は、女性の尊厳を著しく傷つける人権侵害であり犯罪である、と見なされるようになりました。1995年に北京で開催された国連世界女性会議では、これまではきわめて個人的な出来事として、殴られる女性自身が内面化せざるをえなかった女性への暴力の問題を、国が迅速に取り組むべき社会的な問題として宣言したのです。

 この会議をきっかけに、日本では内閣府を中心に男女間の暴力に関する実態調査が行われ、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(以下、DV防止法、2001年施行、04年5月改正)が制定されています。

懲役、罰金刑も

 DV法は、配偶者暴力の防止、被害者の救済、自立支援を柱としており、とりわけ被害者の救済については「保護命令制度」が導入されています。これは暴力をふるう夫を妻あるいは子から遠ざけるために、裁判所が出すもので、「接近禁止命令」(6カ月)と自宅から退去を命じる「退去命令」(2カ月)があります。妻が裁判所に申し出てこのような命令が出されると、その間に妻は緊急避難をしたり、また引っ越しなど次の新しい生活の準備ができます。命令に違反した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。

 DV法は、夫から妻への暴力には身体的暴力のみならず精神的、性的暴力も含まれると規定しています。それらの具体的な内容は、おおむね次の通りです。

 ●身体的暴力:殴る、蹴る、げんこつなどで殴るふりをしておどす、首をしめる、平手で打つ、刃物などを突きつけておどす、物を投げつける…。

 ●精神的暴力:何を言っても無視する、大切にしているものをわざと壊したり捨てたりする、「誰のおかげで食べられるんだ」と言う、生活費を渡さない、交友関係や電話、外出などを細かく監視する、「ろくでなし、おまえなんか何の役にも立たない…」などと言う、妻の実家や親せきの悪口を言う…。

 ●性的暴力:意に反して性行為を強要する、避妊に協力しない…。

 慣れ親しんだ今までの環境を離れて生活していくことには大変な勇気が必要でしょう。お子さんがいればなおさらのことです。

 家を出たあとの当面の住まいや生活費の工面、お子さんの学校、就職、また離婚の手続きなど、クリアしていかなければならない問題はたくさんありますが、あなたを支援する人、あなたが利用できる情報や福祉のサービスもたくさんあります。

 現在の状況をきちんと見極め、そして今後の新しい生活に向けて着々と準備を進めることが大事です。

 そのためにも一人で悩まず必ず誰かに相談してください。同胞法律・生活センターでも、また最寄りの福祉事務所や地域の女性センターでも、どこでもよいので必ず相談してください。(金静寅、同胞法律・生活センター事務局長)(NPO法人同胞法律・生活センター、事務局) TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429(おわり)

[朝鮮新報 2005.4.6]