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イギョラ! 安英学!-3-〜魂の師匠〜 一番成長した一浪時代

 プロになろうと決心したのは東京朝高卒業後。サッカー部の同級生には推薦で大学に進む者もいた。しかし、安英学にはそんな話はなかった。

 「どうしてもプロになりたい」

 「在日選手枠」の適用を受けるため、一浪しながら通信制の上野高校に通い大検を取った。

立正大学時代の安選手(右)。00年度関東大学サッカーリーグ2部都県リーグ入れ替え戦に勝利して(00年11月23日)=【Reiko Iijima/オフィスNID】提供

 安は自身が一番成長した時期を一浪時代だと振り返る。当時、朝青荒川支部サッカー部の主将だった朴得義さん(31)と出会った。夢のJリーガーへのきっかけを作ったのは、朴さんだと言っても過言ではない。

 「とにかくモチベーションを維持しようと思った。当時、僕が『魂の師匠』『闘将』と呼ぶトゥギヒョンニム(朝鮮語で得義兄さんの意)と一緒にサッカーしたのがとても印象深い。ほとんど毎日一緒だった。夜に東京第1で練習したり、東京朝鮮蹴球団、日本人の草サッカーなどでいろんな人と出会って。この期間が自分の中で一番の財産になっている」

 朴さんとの付き合いは9年目になる。同級生と一緒に練習に行ったのが出会いのきっかけだ。

 「2人でいるときはいつもサッカーの話ばかり。休みの日なんかは12時間ぶっ通しでサッカーをした時もあった。努力と情熱は半端じゃなかった」(朴さん)

 朴さんには、安に成就させてほしい事が2つある。一つは所属する名古屋グランパスエイトの優勝。もう一つは、W杯出場と海外でプレーする事だ。

 「あいつの活躍でウリハッキョの生徒たちが夢を持つ。本人も、一人でも多くの人の力になれればと思ってやっているし。在日の星であり続けてほしい」

 立正大学へ進んだ安は、寮生活をしながらサッカー部に所属。4年の時にはチームメイトからの推薦で主将を任されるほど、人望も厚かった。

 当時の同大サッカー部監督は秋山隆之さん(34)だった(現在は新潟医療福祉大学・医療技術学部健康スポーツ学科講師兼サッカー部監督)。

 「サッカーをするための環境をしっかり整えただけで特別な事はしてません。安と携わっていろんな事を教わったのは自分ですよ」と秋山さん。

 サッカーに対してまっすぐ。吸収する能力が高い。成長の一番の要因は「人徳」だと話す。

 そんな安の人柄の良さがにじみ出るエピソードを話してくれた。

 安が3年の時、立正大学は東京都リーグの1部。同大は、00年度関東大学サッカーリーグ2部都県リーグ入れ替え戦で早稲田大学と対戦し3−2で勝利し、関東2部昇格を果たした。安はPKで2得点を決める活躍を見せた。

 同大が催した祝勝会でコメントを求められた安がみんなの前で話した。「今日は応援してくれた先生方のおかげで勝つことができました…」と。

 「みんなに支えてもらっているという意思、安が育った環境がそうさせたんだと思う一言だった。その言葉を聞いて感動して泣いている先生までいましたから」

 シビアな目で見れば「まだまだ伸びる」と話す。「今は優勝を狙えるチームにいるし、質の高い経験を積んでますます成長してほしい。代表としてももっと殺気立っていいと思う。『在日』サッカー界の第一人者的な役割を担っているんですから。彼には期待しています」 (金明c記者)

[朝鮮新報 2005.5.26]