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同胞法律・生活センター連続講座 初回テーマは相続

 NPO法人同胞法律・生活センター主催の連続講座「ズバリ解決! 在日コリアンの悩みあれこれ」が18日、同センター(東京都台東区)で開催された。初回となる今回のテーマは「相続」。同センター所長の洪正秀弁護士が実際の相談事例に基づいて、同胞にありがちな相続の際の問題について解説した。

 在日同胞の相続問題は複雑だ。「日本に住んでいるから日本の法ですべて解決できる」と考えがちだが、北南朝鮮の法も関わってくるので、在日同胞社会やその歴史的、政治的背景を理解し、専門的なアドバイスを受けることも重要だ。

 在日同胞の相続については、まずは準拠法を知る必要がある。日本の法例によると「相続は被相続人の本国法に依る」(法例26条)。共和国の法を本国法とする場合は共和国対外民事関係法により日本法が、南朝鮮の法を本国法とする場合は南朝鮮の法が準拠法となる。

 在日同胞の本国法は、外国人登録証国籍欄の表示や本国における現在および過去の住所、本籍地なども重要だが、いずれの国に帰属するかという当事者の意思がより重要な要素となる。

 以下では洪弁護士が取り上げた事例を紹介する。なお洪弁護士によると、在日同胞に関する問題は、弁護士の中でも知らない人が多い。「専門家がいるのでセンターを気軽に利用してほしい」と語る。

 【事例1】私は在日朝鮮人です。私には兄と姉がいますが、どちらも共和国に帰国しています。最近、父の病状が良くありません。万一、父が死亡した場合、父名義の不動産の相続手続きはどうすればいいのですか。

 遺言書がない場合は相続証明書と遺産分割協議書を作成する必要がある。そのとき、共和国の法を本国法とする場合(A)、「父の法定相続人はだれか、および他に法定相続人がいない旨の宣誓書」、外国人登録原票記載事項証明書、兄と姉については共和国に居住しているという居住証明書、印鑑証明書を用意する。さらに、兄と姉の閉鎖された外国人登録原票の記載事項証明書、母についての婚姻届受理証明、本人(私)についての出生届記載事項証明書が必要。南朝鮮の戸籍謄本が請求可能であれば添付するとよい(必須ではない)。

 南朝鮮の法を本国法とする場合、南朝鮮の戸籍謄本、除籍謄本が必要だ。無い場合はAに準じる。

 遺言書がある場合は、原則としてその内容に基づき分割される(死亡証明のみで登記可能)。洪弁護士は「言いにくいことだが、生きているうちに決めてもらうのが一番いい」と語る。

 【事例2】父が死亡しました。父は解放前に南朝鮮で先妻と子ども一人の合計3人暮らしでしたが、そのあと父のみが来日し母と再婚、私たち3人の子をもうけました。南朝鮮にいる「妻」も別の男性と再婚しているみたいですが、相続関係はどうなりますか。

 共和国の法を本国法とする場合(A)、離婚が成立していれば先妻は相続人ではない。成立していないのなら重婚となり相続人に含まれる。この場合、後妻の婚姻を先妻や子が取り消すこともできる。南朝鮮の法を本国法とする場合(B)、Aとほぼ同様だが、日本での婚姻が1960年より前になされた場合は少し複雑だ。

 離婚が成立している際の相続分に関しては、Aは母1/2、子1/8(1人当たり)、Bは母3/11、子2/11(1人当たり)となっている。

 分割協議がまとまらない場合、A、Bともに日本の家庭裁判所などで調定、審判できる。

[朝鮮新報 2005.6.25]