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全さんとラグビー

 「今日の行事、とくに全源治さんをラグビーマガジンに紹介してあげてよ」

 第20回在日本朝鮮人ラグビー選手権大会(6月11〜12日、東京)のレセプションが終わったあと、日本のラグビー関係者にかけられた言葉だ。

 その言葉に込められた意味を知ったのは後日、朝鮮大学校ラグビー部監督を37年務めた全源治監督を取材した時のことだった。

 日本の高校からラグビーを始め、九州朝高、朝大でラグビーを教え、在日同胞社会にラグビーを根付かせた。まさに「在日ラグビーの育ての親」だ。

 「朝鮮人はサッカーしか知らないから」と笑い飛ばすが、その心境はいかばかりか。「こんなにも在日社会にラグビーが普及するなんて想像できなかった」と語る。

 大阪朝鮮高級学校ラグビー部の生徒らが全国大会に出場し、活躍する姿を見ながら「本当にうれしいことだよ」とほほえむ。

 同レセプションでは、全さんに花束が手渡された。

 「今日はうれしいから俺は歌を歌う」と顔を真っ赤にさせ、熱唱し終えると教え子らは総立ちで拍手を送っていた。関東ラグビー協会、日本ラグビー協会の関係者らもその業績を称えて集まり、教え子らも舞台に上がり握手を求め涙した。

 この時、在日ラグビー発展のために積み重ねてきた業績の大きさを実感した。在日朝鮮人社会には、さまざまな分野で業績を残してきた人たちがいる。全さんとの出会いはそんな人たちを取り上げ、伝えていく大切さを感じさせてくれた貴重なものであった。

 後日、ラグビーマガジン編集部から、「(全さんの記事)スペースをどれだけ取れるかわかりませんが、なんとかしたいと思っています」との返事があった。

 記事は同誌8月号に掲載された。日本のラグビーファンに少しでも全さんの存在を知ってほしいとの記者の思いが叶い、何よりもうれしかった。(c)

[朝鮮新報 2005.7.13]