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同胞法律・生活センター連続講座 「離婚」

 NPO法人同胞法律・生活センター主催の連続講座「ズバリ解決! 在日コリアンの悩みあれこれ」が10日、同センター(東京都台東区)で開催された。第3回となる今回のテーマは「離婚」。同センターの相談員の張學錬弁護士が離婚手続きや調停、養育費、親権などの問題について、主にDV(domestic violence=一般的に夫やパートナーから受ける暴力)被害女性の立場からの問題点、注意点について解説した。

相談件数、常に上位

 日本では年々離婚率が高まる中、とくに初婚者の離婚割合が高くなっている。内閣府の調べによると、3組に1組の夫婦が離婚しており、なかでも婚姻期間が5年未満の20、30代に多いという。

 離婚は同胞のなかでも増加傾向にあり、センターに寄せられる相談のなかでも常に月間上位5位に入っているという。

 離婚の原因はさまざまだが、DV、つまり妻が夫から受ける暴力被害によるものが注目されている。「しつけや教育」を理由に妻を傷つける夫、それをがまんする妻。これらが当然のように思われるような男尊女卑に基づく偏見があったと張弁護士は指摘する。

 がまんしていたものは、一定の限度を超えると修復しがたい隔たりを生む。そして離婚を決意するようになる。

調停離婚までの過程

 日本では、離婚の約9割が協議離婚、つまり話し合いによる離婚だ。しかし、離婚の合意、慰謝料、親権などをめぐって合意にいたらない場合がある。その場合、離婚調停を行うことになる。同胞の離婚においても大きな枠組みはかわらず、実質的に日本の法に従って行われている。

 DVのケースでは、妻が夫の元から命がけで逃げ出したケースがほとんど。身内に相談しても結局は夫との話し合いが必要になる。

 張弁護士は「当事者同士だとほとんど話が進まない。調停を行えば口論にもならない」と言う。調停委員が入ることで冷静な議論ができ、離婚を持ちかけられた夫が真剣に考えるようになるという。

 流れとしては、まず家庭裁判所に調停申し立てを行う(費用は約1000円程度)。そして養育費や親権などについて話し合いをして調書を作成し、お互いが署名したところで離婚が成立する。

 調停委員によっては「がまんが足りない」などと暴言を吐く人もいるそうだが、もし不安なら弁護士を同席させることもできる。

親権、養育費について

 張弁護士はいくつか重要なポイントも指摘してくれた。

 DV被害を受けた場合は、何よりもまずは逃げ出して肉体的な安全を確保すべきだ。東京ウィメンズプラザ(渋谷区)のように緊急避難や相談を受けつけている相談所やシェルターが全国的に設置されている。

 夫に会いたくない場合、住んでいた家から離れる場合などは、家庭裁判所に申し立てることで保護命令が下される。これにより法的な安全が図られる。

 また、夫から「金銭を要求しないなら」「親権を放棄するなら」離婚すると言われ、そのまま協議離婚した場合でも、後日裁判所に申し立てることで子どもの養育費などを取り戻すこともできるという。

 張弁護士は「親権に実質的な意味はなく、もっていなくても親は親だ」と強調する。親権と監護権を分けようという提案には乗らないほうがいいとの指摘もあった。(李泰鎬記者)

 ※第4回は10月22日(土)午後2時から同センターで、「高齢者福祉と権利擁護」をテーマに行われる。

[朝鮮新報 2005.9.20]