top_rogo.gif (16396 bytes)

「乙巳5条約」ねつ造100年 大阪でセミナー 国際法上、不当かつ不法

セミナーのもよう(エルおおさか南ホール、4日)

 「朝鮮植民地100年…−その不法性と過去の清算−」と題したセミナー(主催=同実行委員会)が4日、エルおおさか南ホール(大阪市中央区)で行われ、在日同胞、日本市民ら200余人が参加した。セミナーでは金弘輝実行委員会代表のあいさつに続き、戸塚悦朗・龍谷大学教授が特別講演を行った。また、洪祥進・朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側中央本部事務局長、空野佳弘弁護士(朝鮮人強制連行真相調査団日本人側全国連絡協議会事務局長)、統国寺の崔無碍住職が報告を行った。最後には、「乙巳5条約」ねつ造100年になる今年を日本の過去清算元年にしようというアピール文が採択された。

洪祥進・強制連行調査団事務局長

 セミナーの焦点は、1905年に強制締結された「乙巳5条約」の不法性を明らかにし、その認識から日本政府に過去清算を求めていこうというもの。また、各報告者らは、在日朝鮮人史を100年ととらえることを歴史的事実として法的根拠から検証していった。

 戸塚教授は「乙巳保護条約の不法性と日本政府の責任」と題して講演した。教授は、「保護条約」は大韓帝国の主権独立国家としての存在を国際的に完全に消滅させた画期的条件で、日本の植民地化に必須の条件だったと指摘。

 結論として、大日本帝国が独立国だった大韓帝国の主権を奪いこれを「保護国」とした1905年締結の「保護条約」は、軍事力を動員して高宗皇帝をはじめ大韓帝国大臣ら代表を脅迫し親日工作を進めたうえで、「強制署名」させたもので、「無効」とするしかほかに考えようがないと説明した。

崔無碍・統国寺住職

 これらの点について▼国際法上争いようがないほどに確実なこと、▼日本が国際社会に登場する以前から国際法的に確立していた国際慣習法原則を適用した結果、60年代前半、国連の国際法委員会の条約法に関する論議に引き継がれ、63年、条約法条約の草案を審議するために開かれた国連国際法委員会第15次会議に提出されたウォルドック報告書が「条約に対する署名、批准、接受、あるいは承認を得るために個人的に脅迫や威嚇を加える行為」の実例として05年の「乙巳5条約」を挙げ、このような強要行為を通じた同意は「絶対的無効」であると主張したこと(注参照)▼それが国際的に確定すれば、同事件以後40年間の日本による朝鮮支配の法的正当性の論拠を根本的に覆すことになる−などに留意すべきだと指摘した。

 戸塚教授は、国際法に関する議論を抜きには早急な問題解決の方向は見出せないと述べ、「保護条約が無効だとすると、歴史の再評価が必要になる」と強調した。

空野佳弘弁護士

 洪祥進氏は「在日100年史の視点」と題して報告した。

 在日朝鮮人の歴史の始まりは1910年の「韓国併合条約」であると従来言われてきたが、90年代に入って05年条約に関する新たな歴史的、法的資料が発見され、10年以前に日本各地で朝鮮人労働者が動員された事実も明らかになったと指摘した。

 その中で、93年国連人権小委員会に提出、採択された文を引用しながら人権に対する視点について、日弁連人権擁護委員会の「関東大震災人権救済申立事件調査報告」から、関東大震災時の朝鮮人虐殺による国の責任などについて追及した。

 空野弁護士は「在日朝鮮人の法的地位」と題した報告で、在日朝鮮人に対してどのような法的地位が保障されるべきなのかを考えなければならないと強調し、基本的観点、戦後の在日朝鮮人政策について述べた。

戸塚悦朗・龍谷大教授

 そして、「普通の日本人が感覚で、ハートで理解できるものが必要ではないかと思う」と指摘しながら、「日本政府には戦後、在日朝鮮人の尊厳を回復すべき法的、政治的責任がある」と強調した。

 最後に、統国寺の崔無碍住職が遺骨問題に言及。「この問題の解決のためには日朝国交正常化が必要だが、個人でできることからやっていくことが大切だ」と語った。(金明c記者)

 【注】ウォルドック報告書は1935年の「ハーヴァード報告書」の論理を引き継ぐもの。国家間および条約締結当事者間の「自由意志による同意」を条約成立の本質的条件として規定した。報告書は脅迫が許される唯一の例外は戦勝国が賦課した平和条約だけであると指摘し、たとえば、国家間の条約はその性格から平等の原理が適用されなければならず、自由な選択であらねばならず、恐怖によって同意が助長されてはならないとして、「乙巳5条約」をはじめ5件の条約を挙げている。

[朝鮮新報 2005.11.10]