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「在日朝鮮人史100年シンポジウム」で採択されたアピール文

 「乙巳5条約」強制締結100周年にちなんで12日に東京都千代田区の中央大学駿河台記念館で開かれた「在日朝鮮人史100年シンポジウム」で採択されたアピールを紹介する。

 私たち朝鮮人強制連行真相調査団は、日本の朝鮮植民地化の出発点となった1905年条約(乙巳五条約、韓国保護条約)が強制締結されてから100年目、そして朝鮮が植民地から解放されて60年目にあたるに際し、歴史的事実と法的視点から100年におよぶ在日朝鮮人史を検証し、現在の問題を正確に見つめ、未来の展望を描くため、「在日朝鮮人史100年記念シンポジウム」を開催しました。

 近年、日本の歴代首相は朝鮮植民地支配に対し「お詫びと反省」を繰り返していますが、「乙巳五条約」の強制から100年が経った今日においても、朝鮮と日本との間には、教科書問題から竹島(独島)問題、そして強制連行犠牲者の遺骨問題など植民地支配に係わる様々な問題が未解決のまま山積みにされています。

 問題の所在は、日本政府が朝鮮植民地支配に至る旧条約を、当時としては「合法」的に締結されたものという歴史認識に立っているところにあります。

 私たちは、日本の朝鮮植民地化過程について、最新の歴史的資料と国際法的視点から検証を進めてきた結果、朝鮮の外交権を奪った1905年条約は、1963年国連国際法委員会でも指摘されているように、当初から何ら法的根拠を持たない無効の条約であり、また、この条約を継承した1910年「韓国併合条約」も当然無効であるという見解に立ちました。そして、法的効力を発していない植民地支配体制下でつくられた日本の朝鮮支配関係諸立法はすべて合法性を欠くものと考えます。

 したがって、日本政府が日本国内法を理由に「適法」だと主張する強制連行、強制労働など朝鮮で行ったすべての強制行為は「違法」行為であり、このことに関し日本政府には道義的責任はもとより法的責任が伴うと考えます。

 今年は日本の植民地支配の被害者とその子孫である在日朝鮮人にとっても、100年の歴史を刻む節目の年にあたります。在日朝鮮人は、植民地の受難期、そして解放から今日までの100年間、加害国から法的、制度的差別を受け、民族の尊厳を踏みにじられ続けている世界で唯一の存在です。

 日本政府は、植民地支配および侵略戦争の被害者である在日朝鮮人に対し、国際法上の国家責任として被害回復義務があるということをしっかりと認識すべきです。日本が行うべき被害回復義務には、在日朝鮮人が植民地支配下で被害を受ける以前の状態、すなわち在日朝鮮人の民族的な尊厳と権利を回復する原状回復義務と、解放前と同じように繰り返されている差別、同化政策による加害行為を即時停止する義務が含まれます。

 なかんずく、在日朝鮮人の子どもたちが奪われた民族のことばや文化を学ぶ唯一の場である民族教育を制度的に保障することが、日本社会への同化が進行しつつある在日朝鮮人の現状に鑑みて、とりわけ重要であると考えます。

 現在、日本社会では、歴史の大規模な歪曲、政治家たちの度重なる暴言や靖国参拝、戦争国家体制づくりのための憲法改悪など、過去の不幸な歴史を再現するような由々しき事態が進行中です。欺瞞と暴力によっては、真の平和と繁栄を築くことは出来ません。

 私たちは、南北朝鮮、在日朝鮮人と日本との平和で友好的な明るい未来を実現するため、日本政府が正しい歴史認識にたち、過去の植民地支配と侵略戦争を真摯に反省し、その責任を果たしていくよう、つよく求めます。

[朝鮮新報 2005.11.17]