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初取材での「アクシデント」

 今月から初めての平壌常駐記者暮らしが始まった。

 初めての取材相手は「アリラン」公演に出演し、国家表彰を受けた金日成総合大学の女子学生だった。

 記者になってまだ日も浅く、しかも祖国での初めての取材とあって、やや緊張気味に約束の午後3時、現場に赴いた。

 部屋に通され待つこと数分。現れたのは本人ではなく大学の教員だった。

 目当ての学生は、単位取得のための重要な試験を受けている最中だという。

 1時間後に試験が終わるというので応接室で待つことにした。

 緊張でじっとしていられず、気を紛らわすために、体を動かしたり足踏みをしたり。落ち着かない状態で彼女を待った。

 だが、午後4時になっても彼女が現れる気配はない。それからさらに1時間が過ぎた。時計の針は午後5時を知らせていた。

 いくらなんでも試験は終わっているはずだと思ったが、とにかく待つしかないのでさきほどの教員の研究室に移動し待機した。

 ほどなく誰かがドアをノックした。そこに立っていたのは紛れもなくあれほど待ち焦がれた(?)彼女だった。三つ編みにしたあどけないその姿に、さきほどまでの緊張が一気に緩んだ。

 急いできたのか息を切らしている。

 「ごめんなさい。図書館で勉強していました」と彼女。取材の件がうまく伝わっていなかったらしい。

 仕方なく取材を延期することにした。

 「朝鮮での取材は全て事前にお膳立てされたもの」という意地悪な指摘があるが、この日のアクシデント≠ヘそれがあまりにも先入観に満ちたものであることを示していた。

 3日後、再び彼女のもとへ向かった。約束の時間は午後2時。今度は時間どおりに現れた彼女。心なしかその表情は申し訳なさそうだった。(陽)

[朝鮮新報 2005.12.20]