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埼玉県鴻巣市教育委員会「助成金廃止」を撤回 総連埼玉・中部支部 日本市民の理解え、署名運動など展開

 朝鮮学校に対する教育助成金を廃止、減額しようとの動きが各地で起きているなか、埼玉県鴻巣市教育委員会は2月8日、2005年度からの助成金の廃止を保護者に一方的に通知した。しかし、総連埼玉・中部支部の同胞、学父母、日本人らは、即時に撤回を要求。同委員会は3月2日、自らの軽率な行為について謝罪し、全面撤回した。

同胞、日本人らが賛同

協議する中部支部の活動家たち

 鴻巣市教育委員会は2月8日、財政難を理由に補助金を2005年度から廃止すると、同市在住の保護者たちに一方的に通知してきた。何ら協議も経ない突然のものだった。

 保護者から24日に連絡を受けた総連、女性同盟埼玉・中部支部の活動家らは、ただちに市教育委員会を訪れ抗議した。だが、対応は思わしくなく、市長との面会も拒否された。

 中部支部側は「鴻巣市だけの問題ではない。必ず撤回させなければ」と一致団結し、抗議行動の準備を進めた。ビラと署名用紙を製作し、25日には県本部、県下のすべての支部と分会、学校、幼稚園に配布し、署名を集めた。

中部支部はこれまで助成金の問題や国立大受験資格問題で署名活動を行ってきた

 東京都国立市で存続運動を展開した日本人らの助言も受けた。25日行われた「朝・日連帯新春の集い」と民間団体「埼玉・コリア21」の集会でも市の不当な措置を訴え、協力を呼びかけた。両集いには、元国会議員、県、市議員、高教組、日教組の関係者らが参加していた。

 青商会、朝青、留学同や埼玉朝鮮初中級学校出身の朝高生、朝大生たちも各地の同胞、日本人らに呼びかけメールなどで抗議した。

 市役所と市教育委員会には、わずか数日の間に全国各地の同胞、日本人から廃止の撤回を求める電話、メール、ファクスが殺到したという。

「軽率だった」と謝罪

 同委員会は3月2日、態度を翻し「あまりに軽率だった。歴史的経緯からして朝鮮学校は他の外国人学校とは異なる。全面撤回する」と伝えてきた。翌日には、担当者らがすべての保護者の家を訪問し謝罪した。

 総連中部支部の李昌勇委員長は「不当な弾圧から民族教育を守ろうと同胞、活動家らが一致団結し、迅速に対応した結果だ」と語る。

 鴻巣市は、朝鮮学校児童、生徒の保護者らの要望を受け1994年、「外国人学校児童、生徒通学補助金」を設置。現在、初級部生徒一人あたり月額3000円、中級部生徒一人あたり月額5000円を支給しているが、日本の私立学校と比べて大きな開きがある。

 増額を要請しようとしていた矢先だけに、関係者は大きな衝撃を受けたようだ。

 朝鮮学校を支える会の嶋田和彦さん(埼玉県立朝霞西高教員)は「日朝友好を築いてきたのに…。財政難を理由にするとはよろしくない」と廃止通告時の心境を語る。

「行政とのつながり大事」

 助成金廃止、減額の動きは各地で広がっている。最近では千葉県、国立市(東京)、名古屋市、門真市(大阪)、宝塚市(兵庫)、飯塚市(福岡)などで問題となった。同胞、学父母、日本人らの声に押され存続させた地域もあるが、それを無視し強行した地域もある。

 大阪の堺市、八尾市などでは、市議会の場で民族教育を否定し、助成金の交付を「疑問視」する議員が現れた。東京都荒川区のある議員は、自らのホームページ上で「区民の税金で北朝鮮の民族教育を金銭的に支援するべきだとは思えない」と助成金の廃止を訴えている。同議員はそのサイト上で「朝鮮学校の教育目的は(北の)独裁体制を支えるための世界観をもたせること」などと民族教育を中傷している。

 テレビや新聞などで繰り返される朝鮮バッシングに乗じて、朝鮮学校に一度も足を踏み入れたことのない政治家らが、わずかばかりの助成金さえも廃止させようと騒ぎ立てているのだ。国連や日弁連の勧告を無視し、朝鮮学校にびた一文払おうとしない日本政府の一貫した差別政策の産物といえる。

 李委員長は「(助成金が)ずっと支給されると思ってはいけない。常に行政とつながりを持って、権利を主張することが大事。ほかの地域で起きないようにしなければ」と教訓を語る。(李泰鎬記者)

 ※国連の社会権規約委員会は「民族学校が補助金その他の財政的援助を受けられるように」(外務省訳)することを勧告している(2001年8月)。また日弁連もすでに、「少なくとも私立学校振興助成法によるのと同等以上の助成金が交付されるよう処置をとるべきである」と勧告している(1998年2月20日)。

[朝鮮新報 2005.3.8]