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日弁連勧告書−2− 「治安維持法」人権救済申立事件

 第3 調査の結果

 1、申立人に対する事情聴取
 2、国際基督教大学笹川紀勝教授からの意見聴取並びに資料提供
 3、外務大臣への照会(外務省アジア大洋州局北東アジア課長からの回答)
 4、法務大臣への照会(法務省大臣官房秘書課長からの回答)
 5、参考文献(省略)

 第4 照会に対する回答

 1、外務省アジア大洋州局北東アジア課長からの回答

 (1)2004年1月15日付外務大臣宛照会に対し、同年4月20日、外務省アジア大洋州局北東アジア課長から回答が寄せられた。

 (2)照会事項は、つぎのとおりである。

 ア 1944年8月、申立人が治安維持法で逮捕され、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた事実は認識しておられますか。

 イ 1943年2月当時、朝鮮人である申立人に治安維持法が適用されたのは、如何なる事実に対してと認識していますか。

 ウ 申立人に対して治安維持法が適用されたこと自体の適法性について、どのように解しておられますか。特に、朝鮮での行為について日本で処罰したことの適法性についてどのように解しておられますか。

 エ 1910年に締結された日韓併合条約について、日本政府としては、どの時点から無効になったものと解されていますか。

 オ 日本の植民地統治について、日本政府がその違法性を認めることを明らかにしたことがありますか。また、今後そのような予定がありますか。

 カ 朝鮮半島及び日本国内で、治安維持法により逮捕拷問された者に対し、個別に謝罪し敬意を表明する考えはありますか。

 キ 朝鮮に治安維持法が適用された事案について、日本国政府として、ポツダム宣言受諾後、名誉回復等の何らかの措置を取ったことはありますか。

 ク 日本政府は、申立人に対して、謝罪及び何らかの救済措置を行う考えはありますか。

 (3)回答内容は、つぎのとおりである。

 ア 当省としては関知しないものです。ただし、政府としては、平成10年の日韓共同宣言、平成14年の日朝平壌宣言にあるとおり、過去の植民地支配により多大な損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心よりのお詫びの思いを禁じえないと考えています。

 イ アと同じ。

 ウ アと同じ。

 エ 日韓併合条約については、朝鮮の独立をサンフランシスコ平和条約の規定により承認したことの効果として、大韓民国の独立が行われたときすなわち1948年8月15日に失効したものと考えています。

 オ 韓国併合については、法律的には条約として存在していたものの、同条約が締結された当時に日韓両国が置かれていた歴史的事情については、両国の力関係の違いや様々な国際情勢があり、実質的には双方の立場が平等であったとは考えにくく、このような当時の状況については、我が国として深く反省すべきものがあると認識しています。

 カ アと同じ。

 キ アと同じ。

 ク

 (a)政府としては、当時多数の方々が不幸な状況に陥ったことは否定できないと考えており、戦争という異常な状況下とはいえ、多くの方々に耐え難い苦しみと悲しみを与えたことは極めて遺憾であったと考えています。政府としては、過去の歴史に関し、これまでも様々な形で繰り返し反省とお詫びの気持ちを表明しているところです。

 (b)政府としては、先の大戦に係る賠償並びに財産及び請求権の問題については、サンフランシスコ平和条約及びその他の関連する条約等に従って誠実に対応してきたところであり、政府として個人補償を行うことは考えていません。

 (c)日韓間の財産及び請求権問題については、1965年の日韓国交正常化に際して締結された「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」により、完全かつ最終的に解決済みです。

 (d)また、北朝鮮との間では、日朝平壌宣言において、双方が財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則が明記されており、日朝間の財産及び請求権問題については、日朝平壌宣言に明記されているところに従い、日朝国交正常化交渉において協議されるべきものです(回答書面のまま)。(つづく)

[朝鮮新報 2005.3.8]