そこが知りたいQ&A−熊本朝鮮会館への固定資産税減免撤回訴訟 地裁、原告の訴え退けたが |
熊本市が熊本朝鮮会館(熊本市九品寺)の固定資産税及び都市計画税を一部免除したのは違法として、「救う会熊本」のメンバーが、幸山政史市長に減免の取り消しを求めていた訴訟の判決が21日に行われた。熊本地裁は、「(朝鮮会館が)公益性を備えた公民館類似施設に該当し、固定資産税等の減免措置に違法性はない」として、原告の請求を棄却した。総連関連施設に対する課税の初の司法判断。他の裁判にも影響を与えるのは必至だ。この問題についてQ&Aで見た。 Q 今回の判決はどんな意味を持つのか。 A 何と言っても、総連の会館が「公益性を備えた公民館類似施設である」と認められた点に大きな意味がある。今回の訴訟ではこれが最大の争点だった。 判決では、朝鮮語、民族、風習、歴史などの学習会、講演会などの定期的開催、民族楽器や歌などのサークル活動、市民団体、婦人団体等との交流会、生活相談、各種図書の閲覧などの例をあげ、「本件土地建物は、当該施設の利用対象者、施設の設備や利用実態、事業内容などから見て」公民館類似施設にあたるとした。これはつまり、総連の活動の公益性を認めたことになる。 Q 公民館類似施設とは何か。 A 公民館は、市町村など一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術、文化に関する各種の事業を行う施設で、住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的としている(社会教育法20条)。そのために、定期講座、討論会、講習会、講演会、展示会などの開催、図書、記録などの資料を備え、その利用を図ることなどを規定している(同法22条)。 また、同法第42条1項には、「公民館に類似する施設は、何人もこれを設置することができる」と規定されている。熊本市側は、朝鮮会館が「在日朝鮮人にとっての公民館としての役割を果たしている」と指摘している。 Q 原告の「救う会熊本」は、付近住民などの利用実態がないことなどをあげ、公民館類似施設に当たらないとしているが。 A 判決では、最近は近隣住民の利用はほとんどないとしながらも、規則上や運用上、近隣住民の利用は制限されていないとした。また、在日朝鮮人を主な利用対象者としていても、公民館類似施設といえるとしている。 Q これまでの経緯について説明して。 A 熊本朝鮮会館への課税をめぐっては、「救う会熊本」が2003年9月に住民監査を請求。市監査委員は同年11月、公益性を否定して徴税を勧告したが、市長はこれを拒否した。04年度以降も減免は継続されている。 また、原告は、朝鮮会館が公民館類似施設に当たるか否かを判断するために必要な実質的調査が行われなかったと主張したが、市側は現地に赴き調査を実施している。そのうえで、公益性のある公民館類似施設と認め、減免措置を行った。 Q 他の裁判への影響は。 A 現在、総連施設に対する固定資産税等減免撤回問題と関連しては東京(総連中央会館)、大阪、北海道、新潟で訴訟が起こされている。今回の熊本地裁の判決は、「この動きに影響を与えそうだ」(西日本新聞21日付)、「朝鮮総連関連施設の税減免を巡る初の司法判断で、他の自治体の対応にも影響を与えそうだ」(読売新聞21日付)などの声が出ている。 実際、こうした動きが出てきたのは、拉致問題以降。「北朝鮮バッシング」が背景にあるのは明らかだ。だからこそ、今回の熊本地裁の判決は、他の裁判の行方にも十分に影響を与え得るわけだ。(文聖姫記者) [朝鮮新報 2005.4.26] |