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朝大生にチャンス拡大 地道な要請で権利獲得

 朝鮮大学校卒業者の司法試験1次試験免除が認められて以降(2004年8月)、朝大生に需要の高い主な国家資格についても受験資格が与えられるようになった。04年12月には、保育士資格試験の受験が可能になり(朝大在学生、卒業者)、今年1月には社会保険労務士(朝大卒業者)、5月には税理士(朝大で所定科目を履修した者)の受験資格が与えられた。これまで朝大出身者は、資格取得のために「遠回り」を強いられてきたが、朝大や人権協会などの働きかけにより、大きく開けてきた。資格取得までの道のりと主な国家資格の受験方法などをまとめた。(李泰鎬記者)

突破口は大学院進学

 朝大がさまざまな受験資格を得るようになった背景には、朝大生はもちろん同胞、学生たちの長年に渡る地道な働きかけがあった。

 なかでも重要な転換点は2つ。1998年に京都大学大学院が朝大生の受験を認めたことと、法務省司法試験委員会が「1次試験免除に関する規則」の改正案をまとめ朝大出身者の免除を認めたことだ。

 以前は、ほとんどの大学院が「大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」に受験資格を与えるとしながらも、文部省(当時)は「資格なし」の立場を通してきたため、多くの公立・私立大大学院への入学実績があったにもかかわらず、朝大生の国立大大学院進学の道は阻まれていた。

 だが、京大大学院(理学研究科)が朝大生に受験資格を与え、1人が99年度に入学を果たしたことにより、朝大生の国立大大学院進学への突破口が開かれた。1999年には、文部省の大学院入学資格弾力化措置により、実質的に朝大生に国立大学大学院の門戸が開放されることになった。

同胞、学生一丸となって

 朝大からは京大合格以降、東京大、一橋大、筑波大、東京学芸大、大阪大、神戸大、広島大など多くの国立大大学院に合格し、博士課程に進んだ者もいる。これはまさに、朝大が日本の大学と何らそん色ない教育を行っていることを証明している。

 朝大側はこうした事実を踏まえ、司法試験1次試験免除の要請も行った。

 そんななか、依然認められていなかった朝高生の国立大学受験資格問題が大きくクローズアップされた。多くの同胞、学生、日本人らが要請活動や署名運動に参加し、朝鮮学校の処遇改善を訴えた。

 朝大や人権協会は保育士、社会保険労務士、税理士などの資格についても受験資格を認めるよう関係省庁、団体に対し積極的に要請し、一つひとつ着実に権利を勝ち獲ってきた。

 以前は、通信制の高校や日本の大学で必要な単位を取得するなど「ダブルスクール」を余儀なくされ、精神的、経済的負担を強いられていたが、受験者たちの負担は軽減され、国家資格に関心を寄せる学生も目に見えて増えてきた。

朝高にも拡大化の流れ

 朝高出身者の受験資格問題も注目されている。国立大学受験資格を同胞、学生らが一丸となってたたかい、勝ち取ったことは記憶に新しい。04年には京大医学部に京都朝高卒業生が合格。今年3月には、広島初中高の生徒が東大に現役合格した。

 これに伴い、専門学校の受験資格の弾力化もなされ、看護師や保健師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師といった養成所への進学の道も開かれてきた。

 保育士については、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫などが2年以上の実務経験のある朝高出身者に受験資格を認めており、調理師についても、2年以上の実務経験のある朝中出身者に受験資格が認められている。

 朝大を含む朝鮮学校出身者の活躍や進学、資格取得状況を考慮すれば、民族教育が日本の教育と比較して何らそん色ないことがわかる。もはや、受験資格において朝鮮学校出身者を排除する理由はどこにもない。

 同胞法律・生活センターの担当者は、「主だった国家資格取得における差別状況が大きく改善されたことにより、民族学校への差別是正の流れはさらに加速化されるだろう」と指摘する。しかし「ただ一部の大学や専門学校、また都道府県ではこういった変化を把握できず、旧態依然とした対応を取るところもありえる。そういった『壁』にもしぶつかったなら、解決のためのお手伝いをするのですぐに連絡してほしい」と語っている。

主な国家資格の内容について

 【弁護士】 「当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする者」(弁護士法3条1項)

 【司法書士】 他人の嘱託を受けて、登記・供託・訴訟などに関し、裁判所・検察庁・法務局・地方法務局に提出する書類の作成を職業とする者。(参照=司法書士法第3条)

 【行政書士】 他人の依頼を受け報酬を得て、役所に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成などを行う者。代書的業務から複雑多様なコンサルティングを含む許認可手続きの業務へと徐々に移行している。(参照=日本行政書士会連合会HP)

 【社会保険労務士】 労働・社会保険に関する法令や取り扱いに精通し,企業内の人事や労務に関し法律や労務管理の知識を駆使して指導を行う者。各種社会保険の提出書類を作成し、書類提出の代行を行う。(参照=社会保険労務士情報サイトHP)

 【保育士】 「登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者」(児童福祉法第18条の4)。児童福祉施設(保育所、乳児院、児童養護施設など)で、親や地域と連携しながら子どもの心身の成長、発達をサポートする。

 【税理士】 「税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、 納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命としている」(税理士法第1条)

 【公認会計士】 財産目録、貸借対照表、損益計算書などの財務書類の監査・証明を行う者。その他、会計全般についての調査・立案・指導(会計業務)、税務書類の作成・税務相談(税理士法に従った税務業務)、経営戦略・業務改善・情報システムに関するコンサルティング(経営コンサルティング業務)、さらに近年はM&A業務、株式公開業務、システム監査業務、国際業務、公職業務などを行っている。(参照=日本公認会計士協会HP)

 【不動産鑑定士】 地域の環境や諸条件を考慮して「不動産の有効利用」を判定し、 「適正な地価」を判断する者。国や都道府県が土地の適正な価格をー般に公表するための、地価公示制度や地価調査の制度をはじめとして、公共用地の買収評価、相続税路線価評価、固定資産税評価、裁判上の評価、会社の合併時の資産評価ならびに現物出資の評価、さらには、不動産に関するカウンセリングなどを行う。(参照=日本不動産鑑定協会HP)

[朝鮮新報 2005.6.29]