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そこが知りたいQ&A−総連中央の固定資産税 「鑑定所見書」を提出したそうだが

 総連中央が昨年5月、東京都による総連中央本部会館(東京都千代田区)に対する固定資産税および都市計画税賦与処分等の取り消しを求める訴訟を東京地裁に起こしてから1年あまりが経過した。前回の口頭弁論で総連側は、日大法学部名誉教授・法学博士である北野弘久氏による「鑑定所見書」(以下「所見書」)を提出した。その内容についてQ&Aで見た。

 Q 「所見書」はどんな内容なの?

 A 税法の権威である北野氏が税法学上の所見を述べたものだ。体系は@本件(固定資産税等訴訟)合資会社朝鮮中央会館管理会と朝鮮総連との関係A朝鮮総連と本件不動産B都税条例134条1項違反C信義則違反D平等取扱い原則違反E結語−の6つからなる。

 Q 中心内容は?

 A 総連中央会館の所有権者である総連が、実質上朝鮮の在外公館であることを東京都自らが認め、40年間にわたって固定資産税等を免除してきたということだ。

 「所見書」ではまず、総連中央会館の所有権者が総連であることを明記。総連が人格のない社団であることから、会館を登記するための手段として合資会社朝鮮中央会館管理会を設立したと指摘した。つまり、朝鮮中央会館管理会は、本件不動産の単なる登記名義人に過ぎず、真の所有者である総連の目的、性格、機能(活動)・利用の実態が客観的に解明されるべきだと主張している。固定資産税は所有者課税の租税だからだ。

 そのうえで、「所見書」は「被告(東京都)は、昭和39(1964)年度以来、本件不動産の所有権者が朝鮮総連であり、その朝鮮総連が朝鮮民主主義人民共和国の日本における大使館的存在として、さまざまな在外公館的役割を果たしており、本件不動産の全部が実質的に在外公館的施設として固定資産税等の税額を全額免除してきた。被告は、登記名義人の変更がある場合を除いて、免除申請をしなくても自動的に税の全部免除をするという取扱いを40年にわたって公然と行ってきた」と述べている。

 Q 都自体が認めているということだね。

 A そうだ。にもかかわらず、都側は今回の訴訟の段階になって初めて、総連中央会館が総連の所有であるかどうか、総連が同会館を通じてどのような活動をしているかどうかは論ずる必要がないと主張していると、所見書は指摘している。

 Q 総連が在外公館であることは朝鮮側も認めているの?

 A もちろんだ。「所見書」では朝鮮外務省スポークスマン談話を証拠資料として掲載している。そこには「朝鮮総連は、日本で民族の尊厳と自主権、同胞の民主主義的民族権利を擁護するわが共和国の神聖なる海外公民団体である。とりわけ朝鮮総連は、朝・日両国間に国交がない状態のもとで、日本人民との友好親善のための外交代表部格の使命と役割を遂行している」と記されている。

 また、朝鮮が国連加盟国であり世界158カ国と国交を結んでいる独立国であると指摘。2002年9月17日に「国交正常化に努める」ことなどをうたった朝・日平壌宣言が締結され、小泉首相が昨年5月の総連全体大会に祝賀メッセージを送っていることも、総連が朝鮮の在外公館的組織であることを示すものだと主張している。

 Q 総連の活動内容については?

 A 「所見書」では総連が@朝鮮への在日朝鮮人と日本人の渡航手続業務など、A朝鮮からの来日に関する身元引受、関係官庁との交渉窓口、B日本との文化交流、C在日朝鮮人の広範な人権擁護活動・民族教育活動、D朝鮮と日本を含む他国との間の貿易、経済交流の窓口的役割、E朝鮮の宣伝活動、F日本政府その他の在日公館(大使館等)、国際機関との交流などの外交活動、G人道支援事業、などを行っていると述べている。

 そのうえで「所見書」は、「(総連中央会館の)全部が固定資産税等の全額免除の対象になるかどうかは、単なるいわゆる物的課税除外の問題ではなく、その所有主体が朝鮮総連(外交使節)であることに配慮すべき一種の人的課税除外的性格の問題」だと強調する。

 Q 平等取扱い原則違反の意味は?

 A 「ある納税者に対して行われた課税処分自体が現行法のもとで適法であるとしても、他の納税者に対して適用されている有利な取扱いを特段の理由がないのに、当該納税者に対して適用しないことは、そのことだけで平等取扱い原則(憲法14条)に違反し、違法となる」(「所見書」)ということだ。

 その例として、国交回復前の中国の中日備忘録貿易弁事処駐東京連絡処に対して、総連と同じ理由で、固定資産税等の全額を免除してきたこと、現在では台湾の台北駐日経済文化代表処に対して固定資産税等の全額を免除していることを上げている。同代表処免除の理由は「中華民国の日本における外交の窓口機関」ということだ。

 であるなら、「総連に対する今まで40年間の固定資産税等の全額免除の取扱いこそが妥当であり、適法」との主張が成り立つ。都が、総連中央会館に対して台北駐日経済文化代表処などとは異なった課税処分をとることは、平等取扱いの原則に違反し、違法であるといわざるをえない。(文聖姫記者)

[朝鮮新報 2005.7.2]