top_rogo.gif (16396 bytes)

大阪高裁 同胞障害者の控訴を棄却、「不当で恥ずかしい判決」

 京都市に在住する同胞障害者7人が、障害基礎年金不支給決定の取り消しなどを求めて日本政府を相手に起こしている裁判で、大阪高裁は10月27日、一審(京都地裁)同様、原告の訴えをすべて棄却した。「外国人を排除するのは差別ではない」とする一審の判決を支持した高裁に対し、原告をはじめ傍聴に訪れた彼らを支援する人たちからは、「この国には民主主義はあるのか」「裁判所は現実をしっかりと見ろ」などと抗議の声が噴出した。

「司法」の判断避ける

大阪高裁に入る原告たち

 原告らは裁判で、基礎年金不支給が国際人権規約A規約2条2項(権利の完全実現において「人種…他の地位に対する客観的、合理的理由のない差別は許さない」)自動的、即時執行性と同B規約26条(異なるカテゴリーに属する者同士の間に、国家の施策上の別異な取り扱いをなすことは原則的に許されず…)、憲法14条などに違反していると指摘した。

 これに対し大阪高裁は、「A規約2条は…締約国において、その権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものといえ、…個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない」(判決文)と主張。B規約26条については、「具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、…裁判所が審査判断するに適しない事柄」と司法としての判断を避けた。

 憲法14条違反についても、「1項で禁止されている差別の範囲内か否かは必ずしも明らかでない」と現実とはおよそかけ離れた認識を示した。

「絶対にあきらめない」

集会では、判決の不当性について説明がなされた

 裁判終了後、代表らは記者会見に臨んだほか、大阪弁護士会館で糾弾集会が開かれた。

 集会ではまず、弁護団の池上哲朗弁護士が、判決の不当性について述べた。

 池上弁護士は、「一審より後退している極めて不当で、恥ずかしい判決だ」としたうえで、国際人権規約A規約2条でうたわれている社会保障の平等は、締約国が無条件で守るべきものであり、社会保障制度をつくるうえで、不平等があってはならないというのは規約人権委員会など国際社会では確定した解釈だと強調。司法が立法をチェックするという機能が働いてしかるべきなのに、一度つくった法律に対するチェックをしないのなら裁判所などいらないと語気を強めた。

 伊山正和弁護士も、法律をつくったり改正したりする場に立ち会えない在日朝鮮人はどうするのかと述べながら、「国際的に見れば在日朝鮮人の方々の差別的な処遇というのは明らか。『立法裁量権』『政治的責任』を持ち出した今回の判決は、学説的には大きな波紋を呼ぶだろうし、国際的には責任を問われるだろう」と指摘した。

 一方、原告らも今回の判決に対し怒りを露にした。原告らは、「棄却と聞いて非常な怒りを覚えた。要旨を聞いたがまったく納得できない」「負けて悔しい。これからの生活がどうなるか心配」などと述べた。

 原告の一人である金洙榮さんは、「不当な判決が出てもショックを受けないよう、気持ちを落ち着かせて裁判に臨んだが、判決を聞いて本当にびっくりした。あしかけ8年間たたかってきて、もう限界かと思うことも時にあるが、日本社会のすべての人たちに私たちのことを知ってもらうため、絶対にあきらめない。今回の裁判では負けたが、多くの人が不当だと思うだろう」と締めくくった。

 弁護団では今後、原告らの同意を得たうえで、最高裁に上告する構えだ。(李松鶴記者)

[朝鮮新報 2005.11.1]