会社法改正解説 -上- 中小企業から見る新会社法の主な内容と活用のポイント |
法務省が提出した「会社法案」(以下、新会社法)が6月29日に参議院で可決された。現在の予定では、来年の5月1日頃に施行されることになる。改正のポイントと留意点について、朝鮮大学校政治経済学部法律学科の洪忠一助手に指摘してもらった。 1、法改正の現況と意義 会社法とは、会社の組織、運営について規定する法律です。具体的には、会社の設立、機関(株主総会、取締役、取締役会、代表取締役、監査役等)、計算、資金調達、組織変更、清算などの方法を定める法律であり、会社の安定的な運営のためには必要不可欠な法律です。今回、このような会社法が全面的に改正されることになりました。新会社法では、従来よりも多くの選択肢を会社経営者及び会社を経営しようとする者に与えています。したがって、新会社法を知ることにより安定的な経営を実現することができるとともに、今まで以上に合理的な会社経営を実現することが可能になると思われます。 2、新会社法の主な内容 今回の会社法改正のねらいの一つは、従来大企業に適していたとされる商法(会社法)を自由度の高いものにして中小企業にも活用できる形態に変えることにあります。そのため新会社施行後には、株式会社が有限会社のような方法で会社を運営できるようになります(すなわち、有限会社のような方法で会社運営を行なっても法律違反にならないということです)。また、新しく、会計参与制度や、合同会社(以下LLC)などが新設され、最低資本金1000万円という規制も撤廃されました(表1参照)。 3、新会社法の利点 @株式会社と有限会社の一体化による経営の合理化 新会社法では、有限会社に関する法律の規定の多くを株式会社に関する規定の中に含めることにより、株式会社であっても中小規模のものは、会社内部の構造を株主総会と最低一人の取締役という有限会社で認められる形を採用することができるようになります(現行の会社法では最低3人の取締役が必要であるとされています)。これにより名目的な取締役を設置しなくてよくなるので取締役の責任に関するトラブルをなくすことができるとともに、無用な報酬を削減することができます。また、取締役の任期を10年(現行法では2年)まで延長できるため登記手続費用を削減することができます。株式に関しても非公開会社では、株主平等原則の例外として@利益配当A残余財産分配B議決権行使事項について各株主について異なる内容を定めることができます。 A合同会社の新設による新たな可能性の創出 新会社法では、従来の会社法にはなかった合同会社が新設されています。合同会社とは、出資者の責任が有限責任でありながら、組織運営を自由に行うことができる会社形態のことです。それは、会社内部の規定を会社構成員の間で自由に定めることができるということを意味します。そのため株式会社や有限会社のように利益配当や議決権の分配について出資比率という基準以外の独自の基準を定めることができます。従って利益配当や議決権の分配の基準を商品開発の貢献度等とすることによって資金力には乏しいが優れた知識や能力を有する者を会社構成員に加えることが容易になります。また、そのような者が自ら事業を行うことが容易になると思われます。ソフトウェア開発、IT産業、産学協同事業などの創造的事業で利用されることになるでしょう。 B会社設立の簡易化 新会社法では、株式会社の設立にあたり1000万円の資本金を必要とする最低資本金制度を撤廃したため、1円で株式会社が設立できることになりました。さらに、最低資本金制度の撤廃により設立登記の際に必要とされる銀行等の払込金保管証明書の制度がなくなったため設立費用を削減することができます。また、定款における会社の目的の記載方法が緩和されることになり、会社設立を容易に行えることになりました。(洪忠一、朝鮮大学校政治経済学部助手) ●表1
[朝鮮新報 2005.11.1] |