会社法改正解説 -下- 新会社法施行後の留意点 |
@新会社法と有限会社 新会社法が成立したことにより有限会社法が事実上なくなることになります。したがって、新会社法施行後は有限会社を設立できなくなります。そのため新会社法では中小規模の閉鎖会社については、多くの点で有限会社法と同様の規定を置いています。しかし、取締役、監査役の任期を定めなければならない点や決算公告が義務付けられている点が異なるのでこれらの適用を回避しようとするならば新会社法施行前に有限会社を設立することが望まれます。なお、新会社法施行後は、負債が200億円を越えるような事業で厳格な大会社規定の適用を避けるために、有限会社にするという方法を採用することができません。このような問題を回避するために合同会社を利用することが考えられます。 現行の有限会社法に基づき設立された有限会社は、「会社法の施行に伴う関係法律の整備などに関する法律」により新会社法施行後も引き続き従来と同様の規定が適用されることになります。また、有限会社から新会社法の株式会社に移行するには、定款を変更して、商号中の「有限会社」の文字を使用することをやめる決議をして、解散登記を行い、新株式会社としての設立登記を行うことになります。 A会計参与制度 会計参与制度が新設された趣旨は、主に中小会社の決算書類の信頼性の向上にあります。このような目的のために税理士や公認会計士を会社の機関に組み入れ、決算書を取締役と共同で作成することを可能にしました。しかし、会計参与は、承認した計算書類に関して取締役と同じく連帯して責任を負うとされているため、会計参与を設置しようとする会社は、責任の重さに対応する相当な報酬を払う必要が出てくることが予想されます。 B合同会社(LLC)と有限責任事業組合(LLP)の利用局面 合同会社は従来の会社形態に比べ非常に使い勝手の良い事業形態であると考えられます。しかし、合同会社は法人格があるために税法上、法人課税となり二重課税を回避することができません。そのため、経済産業省は新たにLLPという事業形態を創設しました。 LLPとは、出資者の責任が有限責任でありながら民法組合のパススルー(構成員課税)や自由な組織設計を合体させた新しい事業体のことです。LLPは、組合のように、構成員課税であるため事業体の段階で課税はされません。また、事業で損益が生じた場合に他の所得との通算が可能となります。しかし、LLPには法人格がありません。そのため合同会社のように出資者に対して給料(報酬)を与えることができません。 このような両事業体の特徴から立ち上げる事業を本業とするならば安定した報酬を得られるLLCを選び、反対に本業とは別の新たな事業を立ち上げるならば課税上有利であると思われるLLPを選ぶという方法も一つの選択肢として考えられるでしょう。 たとえば、複数の中小企業が技術を持ち合い共同で高性能部品を開発、製造するという事業等を行う場合にLLCやLLPを利用することによって事業協同組合では得られなかったメリットを享受できます。事業協同組合の場合、総会、理事会の設置が必要であり、議決権、利益配当は出資比率によって決めなければならず、法人課税となるが、LLC、LLPは、機関設置が自由であり、議決権や利益配当は出資者の合意により決定することができますし、構成員課税により二重課税を回避し、損益通算も可能となります。(洪忠一、朝鮮大学校政治経済学部助手) ●表2 新たな事業形態の内容
[朝鮮新報 2005.11.9] |