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朝鮮経済の今、活気あふれる生産現場 経済に復興の兆し

 取材のため8月から11月まで朝鮮に滞在した。解放60周年、朝鮮労働党創建60周年という節目の時期にあたったこともあって、平壌は例年と比べても一段と活気にあふれているように見えた。とくに、経済が復興の兆しを見せ始めていることを感じとれた。1990年代の「苦難の行軍」を乗り切り、回復気流に乗りつつある朝鮮経済の現場を報告する。

好転する電力事情

平壌靴工場の内部

 近年、電力増産は経済の重要課題の一つになっている。火力部門では設備の補修、改良に力が注がれ、水力部門では中小型発電所の建設が全国規模で進められた。

 首都平壌への主要電力供給源である平壌火力発電所や東平壌火力発電所では、年間を通してタービンやボイラーなどの設備補修とともに、重油の節約と発電設備の稼働率を高めるための技術改良が進められた。

 平壌火力発電所では平壌市中心部の5つの区域に電力を供給しているが、ここ数年、電力生産量が年を追うごとに増えている。発電所関係者らは、「新しい技術の導入と設備の現代化」を電力増産の要因に挙げた。

 冬場は電気と熱の消費量が年間を通じて最も多い季節だ。平壌では床下暖房が主流なので、電力と温水の安定供給はこの時期の火力発電所にとって至上命題となっている。以前は冬場の電力供給に頭を悩ますことが多かったが、設備補修が功を奏して、今では本格的な冬の訪れとともに発電所はフル稼働している。

平壌火力発電所の司令室

 「今年の冬は各家庭に十分な電力と温水を供給できそうだ。これからさらに忙しくなるが、人々が暖かい家で冬を過ごせるなら、忙しさも苦にならない」と、平壌火力発電所のチョン・グァンサム課長は話した。

 党創建記念日や大マスゲーム・芸術公演「アリラン」が重なった時期、夜になると市内が美しくライトアップされた。その後、街並みを飾った電気装飾こそ撤去されたものの、夜には住宅に煌々と明かりが灯る続けるなど、以前と比べて電力事情は好転しているように見受けられた。

 電力の増産は単に電力部門の成果にとどまらず、ほかの分野にも波及効果を及ぼしている。国家計画委員会の関係者によれば、経済活動に不可欠な電力増産のおかげで、工業、農業の諸部門も活性化しはじめたという。

人民生活向上に力点

 新年の共同社説は「人民生活において提起されるすべての問題を成功裏に解決するための課題は、農業生産を決定的に増やすことである」と強調し、人民生活の向上を経済建設の最重要課題の一つに掲げた。

 農業部門に特別に力を入れた結果、近年にない穀物の増産が見込まれている。10月からは食糧供給も正常化された。

 年間150万足の生産能力を持つ平壌靴工場では、最新設備を導入し、品質向上に努めている。2002年の経済管理改善措置実施以降、一定の規模を持つ工場、企業所には、独自に貿易を行う権限が与えられた。これを機に同工場は海外向けの賃加工で利益をあげている。

 また、工場自ら調達した原料、資材を使って生産した製品に関しては、価格を自由に設定できることから、利潤のかなりの部分を拡大再生産や労働者の賃金にあてている。平壌靴工場の例は、経済管理改善措置によって生まれた新たな経済的環境を効果的に活用して実利を上げている実例だと言える。

深まる朝中経済協力

 一方、対外経済分野でも新たな変化が起きている。経済分野でも朝中の密接な関係がクローズアップされた。対外貿易の主要対象国は中国だ。

 中国の無償援助により建設された大安親善ガラス工場、天津デジタル貿易責任有限公司との合弁により建設された平壌自転車合弁工場は、中国の新指導部と朝鮮との親密な関係の象徴になっている。10月、胡錦涛主席の初訪朝時には、朝中間の経済技術協力に関する協定が結ばれるなど、朝中関係が政治にとどまらず経済の分野でもますます深まっているとの印象を受けた。

 平壌自転車合弁工場で生産され、従来の国産自転車「平壌」の質を凌駕すると関係者らが自信を見せる新ブランド「牡丹峰」は、売れ行きも好調だという。

 工場のキム・チュンハ支配人は、「以前は日本から輸入された中古自転車が幅を利かせていたが、これからは価格、質の両面で人々の人気を独占する自転車を作りたい」と話した。

 朝鮮対外経済協力推進委員会では、自転車の生産だけでなく、全国各地に販売所やサービスセンターを作る計画を立てている。関係者らは設立間もない平壌−天津自転車合弁会社を国内の自転車産業を一手に握る企業にしたいと意気込みを語った。(李相英記者)

[朝鮮新報 2005.12.15]