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「女性のつどい」で行った韓明淑議員の講演

 17日、東京で開かれた「女性のつどい」で行った韓明淑・ウリ党国会議員の記念講演の要旨は次のとおり。

韓日間は危機

約330人がシンポジウムに熱心に耳を傾けた

 私はみなさんに問いたい。日本は今、どこに向かっているのか。日本の人々は、この国をどうしたいのか。日本という船は、今、漂流することなく、正しい方向へ向かっているのかと。

 私には人類が発展させるべき平和や民主主義といった普遍的価値から見ると、日本は時代の流れに逆行しているのではないかという気がしてならない。日本の人々は経済を発展させるうえで優れた能力を発揮させているのに、政治、社会を発展させることには、のんびりしすぎているのではなかろうか。先の総選挙での自民党の圧勝により、日本社会はいっそう右傾化するのではないかという懸念が韓国で広がっている。

 とくに今年に入っての韓日関係は、歴史認識の問題をめぐって、韓日関係は「危機」といわれるほど悪化した。そういう多くの問題が、いっさい争点にならないままに今回の結果を迎えたことにも複雑な思いを抱いている。

 そのような憂慮の具体的一つとして、日本の憲法改定をめぐる論議、とくに非武装平和主義で侵略戦争を否定した9条については、韓国からもさまざまな思いがある。9条の問題は、日本が「戦争をする国」になるかどうかの問題である。そして、憲法改定とともに自衛隊が軍隊へと格上げされれば、東北アジアをはじめとするアジア全体の平和、安保の地形は大きく揺れ動くことになり、アジアに深刻な軍備競争を招くことは明らかだ。現在も世界2〜3位の防衛費を持つ日本の自衛隊が軍隊へと再編されれば、東アジア各国の安保への不安は、いっそう高まるだろう。

 このように日本の憲法をめぐる問題は、日本国内にとどまるものではなく、アジア全体の問題であり、朝鮮半島全体の問題である。朝鮮半島の問題は日本の問題でもあるのだ。このことは、南北朝鮮の問題の平和的解決なしには、アジアの平和を期待することはできないということにもつながるだろう。周辺国が6カ国協議に真剣に取り組んでいるのも、そのためである。

加害者意識薄い

 日本社会へのもどかしさの背景には、なぜ、過去の歴史を真摯に捉え、アジア諸国との信頼の基礎を築こうとしないのだろうかという思いがある。

 日本の歴史認識と過去の清算を阻害している大きな要素の一つは、日本の人々がアジア太平洋戦争当時の被者意識を持っていながらも、逆に日本がアジアの多くの国々を侵略し、朝鮮を植民地として支配したという加害者意識が希薄であることではないか。

 朝鮮半島と日本に生きる私たちが、真の和解と信頼の中で友人となるためには、朝鮮半島と日本、在日の市民の間で被害の記憶と加害の記憶をつき合わせ、真摯な歴史対話の機会を制度化する必要がある。

 日本の政治家たちの歴史をめぐる妄言は、1940年代から続いている。韓国の人々が歴史の痛みを忘れる頃になると政治家の妄言により昔の傷を蒸し返す。

 「韓国の経済発展は日本の植民地支配のおかげだ」「36年間の支配は搾取ではなく、善意によるものだ」「日本軍『慰安婦』は強制ではなく、お金儲けのために好きで行ったのだ」という趣旨の発言が絶えない。これまでの小泉内閣の閣僚の中にも妄言スターが何人もおり、そういったことが私たちの心を傷つけている。

女性の役割大きい

 東アジアの未来を開き、平和を実現するためには、誰が、どのような役割を担うべきだろうか。これからの60年の新たな出発では、政府や国家レベルでなく、市民や民衆が前面に出なければいけない。そうしてこそ、侵略と支配に満ちた過去100年間の悪循環を断ち切ることができる。私はそういう意味で、東北アジアの平和について共に考え、解決方法を模索するための制度、システムである「民衆と市民の平和共同体」の形成を提唱したい。

 このような市民運動の中で女性の役割は何よりも重要である。多くの場合、女性は男性より持たざる者であり、利害関係から自由であることが多い。そのため社会をありのままに正しく見ることができる。また、女性は命を生み育む性として、相対的に男性より平和と生命になじみやすい存在である。命の尊さを身を持って体験する女性の感性を通して、平和運動においても女性が積極的な役割を果たすことができる。

[朝鮮新報 2005.9.24]