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くらしの周辺−願わくば、共有財産として

 春はすなわち球春、血わき肉踊るプロ野球開幕の季節である。今年も試合の数だけ酒を飲める機会があるのかと思うと居ても立ってもいられぬ。世間ではプロ野球に酒が絡むとオヤジ臭が立ち昇ると言うから、20代半ばの私が30代に見られる一因は多分ここにあるのだろう。ともかく、福岡で生まれ育った私は朝鮮人であると同時に福岡人だと思っているので、無条件でダイエー改めソフトバンクホークスのファンなのだ。

 元来博多っ子の気質は祭り好きで、騒ぐ理由を常に欲しているため、ホークスが勝てばたちまち博多の街はわき、中州の夜が燃える。球場帰りにメガホンを首にかけて歩こうものならば、すれ違う人に「今日勝ちましたか?」と聞かれる始末。屋台に入れば各々勝手に解説者気取りで一向に話は尽きない。いくら帰化したとは言え、球団と親会社のトップがそろって「在日」である事を気にするファンが皆無なほど、ホークスは福岡県民の「共有財産」として愛されている。

 転じて、もうひとつのメジャースポーツであるサッカー。このほどW杯予選が各地で繰り広げられているが、イマイチ熱心になれない。朝鮮の成績が芳しくないのもあるが、応援する対象が2つある、というのが最大の原因である。もうひとつの対象は日本…ではなく南なので誤解なきよう。人々の心を1つにして然るべきスポーツにて、競技する当事者が1つではない難しさ。これでは一体感を望むべくもない。だから当分、応援するのは身近な福岡の野球チームだけにしようと思っている。寂しいけれど。そしてその「当分」が、半世紀先まで続かない事を願っている。(劉英治、会社員)

[朝鮮新報 2005.4.11]