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絆−家族の姿 連載を終えて

 今年の女性欄の新連載のテーマが、「家族」に決まったのは昨年末のことだった。一般的に「家族」といえば、ひとつ屋根の下にハラボジ、ハルモニ、アボジ、オモニ、そして、子どもや孫がいて…というものだろうが、企画を立てるうえで念頭に置いたのはそれではなかった。

 世の中にはいろんな家族がいるが、いま日本で失われつつある人と人とのつながりや、互いを思いやる気持ちにスポットを当てて、今一度、それらを見つめ直すものにしたいと思った。

 家族の崩壊や中高年の自殺者が増え続ける日本社会。同胞コミュニティーではどうなっているのか。生活での困難さ、立ちはだかる差別の中で力強く生きる同胞たちの姿。それを支える家族を見つめるために、母と娘、父と息子、夫と妻…などにテーマをしぼり、取材対象を探した。

 取材をするにあたっては、プライベートな事柄だけに、「どこまで踏み込んで良いものか…」という思いが常に胸の奥にあった。結婚もせず、子どももいない筆者に対して、取材対象がどこまで心を開いて語ってくれるのかはまったくの未知数。

 せまい同胞社会のことだけに、プライバシー保護のために「仮名」や、写真は顔がはっきりとわからぬよう「イメージ写真」でなどとの配慮も考えた。それほどこの取材はデリケートなものだと思ったからだ。

 連載1回目に登場した岐阜県の金永淑さんは、電話でまず連絡を取ると、快く応じてくれると言った。

 「仮名」、「イメージ写真」の旨を伝えると、「悪いことをしたわけでもないのになぜ顔を隠すの? 名前も写真も出してください。私たちの話が、同じように不妊で悩む同胞たちにとって少しでも励みになれば」と協力してくれた。2回目の任良子さんも、3回目の朴東煥さんも、みな、快く取材に応じてくれた。

 読者からの反響はすぐにあった。自身の不妊体験を綴り、やっと生まれた息子がこの春初級部に入学するとの報告と永淑さんへの励ましのはがきや、オモニへの想いを託した長文の投書、中には組織や祖国、指導者とのつながりをあらためて考え直したというものまであった。また、長い間不妊に悩んだという都内の女性からは、「不妊に悩む同胞のネットワークをつくりたい」との相談も持ちかけられた。

 連載は5回をもってひとまず区切る形となったが、機会があればまた再開したいと考えている。取材を通して、人を思いやる気持ちや愛する心の大切さを学んだ。登場した人たちからは、家族の他にも職場や同胞社会の温かさについても語ってもらった。人と人とのつながり、「絆」を大切にしていきたい。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2005.4.11]