〈本の紹介〉 「大阪で闘った朝鮮戦争−吹田枚方事件の青春群像」 |
「戦争ってなんだろう」と考えた、奇しくも1951年生まれの著者が、戦後史の闇に埋もれかけている「吹田枚方事件」に一条の光をあてた貴重なドキュメンタリー。 朝鮮戦争の真っただ中で反戦共闘に命をかけた朝・日の青春群像が、数奇な糸に繋がれ、いまに甦る。そして日本の朝鮮戦争への「参戦」が、半世紀の歳月をへて「特別掃海隊」、「従軍看護婦」、「日本人兵士」として闇から浮かび上がってくる。 「騒擾罪」で不当に起訴された吹田事件の被告は、朝鮮人と日本人を合わせて総勢111名。72年の最高裁上告棄却による無罪確定まで、実に10年の苦難にみちた裁判闘争が繰り広げられた。 朝鮮戦争の死亡者は数百万人。著者は、事件の当事者や家族を取材し、「戦争の犠牲者は一人ひとりの総和なんだ」と痛感する。その戦争の跫音が、再び迫っている。吹田枚方事件のさらなる真相究明が望まれる。(岩波書店、西村秀樹著)(M) [朝鮮新報 2005.4.18] |