〈みんなの健康Q&A〉 めまい(上)−症状と種類 |
Q:「貧血をおこした」、「貧血で倒れた」とよく言いますが、どういうことなんでしょうか。 A:まず最初に言葉づかいの誤解を解かないとなりません。貧血というと、一般的にはふらふらする、くらくらするといっためまい症状のことを言うようですが、これは血液検査結果で血液が足らないことをさすのであって、めまいという自覚症状を表現するものではありません。貧血によりくらくらしたり、身体がだるくなることはありますが、貧血があるからといって必ずめまいがおこるわけではありません。俗に言う低血圧についても同じことが言えます。 Q:めまいのことを、世間では「貧血だ」、「血圧だ」と間違って言ってしまうことが多いということですね。 A:そのようですね。 ところで、めまいを一言で説明するのは大変難しいのですよ。あえて定義するなら、自分自身や周囲が動いていないのに、動いているように感じる異常感覚、と説明できます。具体的には、ぐるぐる回る、左右にゆれる、身体が沈んでゆく、足元が安定せずふわふわする、周囲がぶれる、目がくらんで立っていられない、目の前が真っ白、真っ暗になる、などと表現されます。 Q:なんと言っていいか、他人にうまく伝えられないこともあります。でも、めまい症状を的確に表現できれば、原因を知るうえで大きな助けになりますよね。 A:もちろんです。めまいをおこす疾患は無数にあるので、その原因を探る上でこういった症状をきちんと分類することがとても重要になってきます。 めまいの症状によって、回転性と非回転性に分類されます。その言葉通り、回転性めまいというのは天井や周囲の景色がぐるぐる回る、あるいは横に流れるように見える、というものです。一方、非回転性めまいというのは、自分の身体がふわふわと浮くような、揺れているような感じや、目の前が真っ暗になったりする、という症状をさします。 Q:なるほど、表現の仕方はいろいろでも、こうやって分類するとわかりやすいですね。 A:さらに、随伴症状として脳神経症状、頭痛、難聴、耳鳴り、はき気、嘔吐などを認めることもあり、こういった症状も原因診断に重要な要素となります。発症の状態も原因によってさまざまです。突然急に始まっためまい、だらだらと続いているめまい、意識がなくなってしまうめまい、朝の起床や下向き姿勢で靴ひもを結ぶといった日常生活動作が引き金になっておこるめまい等々、きりがないほど多様です。 Q:いやはや、とっても複雑ですね。身体のどこが悪いのかによって症状も微妙に異なるのですね。 A:そのとおりですが、人によって同じ疾患でも症状が違うこともあるので、耳鼻科的診察、血液検査、レントゲン、CT、MRIなどによる客観的診断も不可欠です。 病巣による分類として、末梢性と中枢性めまいに分けられます。前者は内耳(前庭と半規管)と前庭神経(内耳道から前庭神経核に至るまで)が責任病巣で、おおざっぱにひっくるめて耳性めまいと言ってもいいかもしれません。つまり耳の中の平衡感覚や聴覚調節がうまくはたらかない場合です。その典型的特徴は、回転性で眼球の異常運動を伴い、発作性に発症することが多く、難聴、耳鳴り、耳閉塞感を合併することです。 中枢性というのは脳幹や小脳、大脳の病変をさします。血管障害(梗塞・出血など)や腫瘍性病変が主な原因で、ふわふわとした浮動性めまいが多いとされています。当然のことながら、病巣部に一致した中枢神経症状や脳神経症状が認められます。たとえば、中枢神経症状として、意識の低下、物や人物を正しく認識できない、言葉がうまくしゃべれない、簡単な動作ができない、姿勢を保てない、手がふるえるなどがあり、脳神経症状では、眼球運動異常、顔面神経麻痺、のどの感覚異常や味覚障害などがよくみられます。これらは医師の診察により判断されるものです。この中でも小脳出血と梗塞は頻度が高く、回転性めまいとともに、頭痛、はき気、嘔吐、さらに起立歩行困難などが認められることでよく知られています。(金秀樹院長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800) [朝鮮新報 2005.5.20] |