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〈本の紹介〉 「世界遺産 高句麗壁画古墳の旅」

 本書は2004年7月、高句麗壁画古墳がユネスコ世界遺産に登録されたことを契機に、執筆されたとのことである。古代高句麗時代の朝鮮半島北部には、3世紀から7世紀にかけてのおよそ400年にわたって、石室の内部に壁画を描いた古墳が築造され続けた。今日までに発掘調査された壁画古墳は、100基におよぶというが、世界遺産に登録されたのは63基である。そのうち23基は、現中国の吉林省・集安に存在するが、本書はそれを除いた現朝鮮地域の平壌市、南浦市、平安南道、黄海南道に分布する古墳を取り上げ、紹介したものである。その構成は、第1章「東明王陵と真坡里古墳群(平壌市力浦区域龍山里)を歩く」、第2章「湖南里四神塚とその周辺(平壌市三石区域湖南里)を歩く」、第3章「徳花里壁画古墳を歩く」、第4章「徳興里壁画古墳を歩く」、第5章「江西三墓を歩く」、第6章「薬水里と水山里壁画古墳を歩く」、第7章「双楹塚と龍崗大墓を歩く」、第8章「安岳1号、2号、3号墳を歩く」の8章からなっている。

 高句麗の古墳壁画といえば、日本の高松塚古墳、キトラ古墳の壁画の源流としてよく知られており、青龍、白虎、朱雀、玄武の四神図や、精密な天文図を思い浮かべる方が多いであろう。本書は、そのことに限らず、壁画古墳に示された高句麗文化が、古代日本、さらにその後の日本文化にいかに多くの影響を与えたかということが、わかりやすく、そして情熱的に語られている。もちろん高句麗史それ自体における、壁画古墳築造の意義についても十分に論究されており、本書は質の高い高句麗史入門書ということもできる。

 また、本書の大きな特徴は、掲載された壁画の写真の多さと、それがすべてカラー写真であるというところにある。読者は、居ながらにして現実の色彩で壁画を見ることができる。その写真からは、改めて壁画の美しさ、すばらしさを実感させられるとともに、鮮明なままに残されている部分の多さに驚かされる。ただ、一方においては、高松塚古墳、キトラ古墳の壁画の劣化の問題を聞かされると、高句麗の壁画は、今日においても掲載された写真のままに保存されているのであろうか、との不安な気持ちも生じてくる。ともあれ、本書はその題名に示されるとおり、読者に高句麗壁画古墳を自ら旅してみたいとの、強い思いを抱かせる書である。(全浩天著)(篠川賢、成城大学教授)

[朝鮮新報 2005.5.30]