本書は南朝鮮でベストラーになった歴史家・韓永愚氏の「取り戻す私たちの歴史」の全訳。韓氏は１４年をかけて執筆を終え、１９９７年３月に初版第１刷がソウルの経世院から上梓された。現在までに１３回の増刷を重ねている。

　本書は全体が６編に分けられ、全３３章で構成され、７１７ページにおよぶ大著である。旧石器時代から始まり、２００１年までという長い時代を取り上げるという壮大なもの。各時代の叙述は、最新の研究成果を取り入れて構成されている。その一方でとりわけ古代史においては北や日本の学術成果をも十分利用し、できるだけ広い視野から全体を眺めようとしている。近現代については一部見解の分かれる記述も散見されるが、著者の強い意図は２０００年の総選挙における落選運動や金大中大統領の北訪問を高く評価している点に現れている。

　米国のブッシュ政権誕生と朝米関係に対する言及で本書を締めくくっている。イラク空爆、米の北への軍事的圧力への言及もある。歴史家は警世家であるべきだという著書の面目躍如と言えよう。（韓永愚著）（粉）

［朝鮮新報 2005.6.8］