〈本の紹介〉 作家と作品でつづるロシア文学史 |
ソ連邦崩壊以後、アメリカ帝国主義の専横は、ほしいままのものとなり、それにともなって米国式退廃文化の世界的範囲での浸食が進み、それは、ロシアにおいては、批判的リアリズム文学と社会主義リアリズム文学を無価値のものとする風潮をもたらした。この嘆かわしい風潮は、ベリンスキイに始まる革命的民主主義者たちの文学的功績を否定し、プーシキンやゴーゴリ、トルストイやチェーホフの作品さえも書店から姿を消すという現象さえも生み出している。 ソ連邦が共産党独裁の「悪の帝国」であったとする、アメリカ帝国主義の悪意にみちた稚拙な論難がまかり通って「母」を書いたゴーリキイ、「鉄の流れ」の作者セラフィモヴィチ、「鋼鉄はいかに鍛えられたか」で知られるオトスロフスキイ、「若き親衛隊」を発表したファジェーエフ、「静かなるドン」でノーベル文学賞を授与された、ショーロホフたちに代表されるソビエト文学は、いわゆる「官製の宣伝文書」であって、文学作品ではないとされ、出版界から締め出されている。 19世紀のロシア文学は、帝政ロシアの農奴制的現実を批判し、革命運動と一体となって発展した進歩的な文学であった。10月社会主義革命後のソビエト文学は、社会主義を擁護し、称揚する革命的な文学であった。私はこのことを、金日成主席と金正日総書記の文学・芸術論、すなわち、祖国の進歩と発展にとって有益であり、勤労大衆を革命思想で教育するうえで有効であってこそ真に人民的な文学・芸術たりえるという観点に立って、論証することにつとめた。 したがって、本書の主たるテーマは、ロシア・ソビエト文学について論述しつつも、チュチェ思想に基づく、文学のレゾン・デートル(存在価値)を明確にし、人民的文学の復権を提唱したところにある。(卞宰洙、元朝鮮大学校教授) [朝鮮新報 2005.6.13] |