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〈みんなの健康Q&A〉 心臓ペースメーカー(上)−原因疾患

 Q:私の父が今度心臓にペースメーカーという器械を入れる手術を受けることになったのですが、急なことでびっくりしています。

 A:心臓のことですから、どのようなものであれ大いに気にかかるところです。ところで、原因疾患はなんと言ってましたか。

 Q:さあ、そこまでは…。ただ、めまいというか、意識がなくなるというか、何度かそのような症状があったそうです。

 A:うん、やはりそうでしたか。

 Q:というと?

 A:つい最近、めまいについてお話ししたことがありましたね。その時には十分触れることができなかったのですが、失神といって、脳への血液循環が途絶えることによる一時的な意識障害、つまりしばらく意識がなくなるという恐ろしい病態があるのです。

 Q:そういえば、起立性調節障害というのをお聞きしたように思います。

 A:それも原因のひとつにあげられます。てんかん、低血糖、クモ膜下出血、頭部外傷なども一過性の意識障害をひきおこしますが、一般に失神といえば、これらとは違って、全身血圧の低下による脳循環障害が原因となるものをさします。いくつもの原因疾患がありますが、心疾患が全体の約10%を占めるといわれています。この心臓の異常とは、心臓から血液がきちんと送り出されないという状況をいいます。

 Q:心臓がそんなに急に弱ることがあるのですか。

 A:はい、その中でも心臓拍動が何秒間か途切れたり、拍動数が極端に少なくなった場合に、失神やふらつきを生ずることがあるのです。

 Q:なぜ、心臓の動きが鈍くなったり、遅くなったりするのですか。

 A:それは刺激伝導系障害のせいです。心臓には家庭の電気配線と同じように電気的興奮を伝える経路があります。これを刺激伝導系といい、「洞結節」といって右心房にある最初の電気刺激を発するところから始まって、心房から心房・心室中継所である「房室結節」を通って左右の心筋全体に電気的興奮が分配されて伝わります。これにより心臓は規則正しく1分間に50〜90回拍動する仕組みになっています。

 Q:それを記録したものが心電図というわけですね。

 A:その通りです。

 電気的興奮が発生する源の部分、あるいはその電気的興奮を伝える経路に故障が起こると心臓の拍動に異常が起こり、遅くなったり速くなったり、不規則になったりします。

 Q:私の父の場合は、脈が極端に遅く、時に数秒間止まってしまうために気を失うという病気らしいのですが。

 A:脈が遅い、すなわち脈拍数が少なくなる病態を徐脈といいます。徐脈性疾患の代表的なものは、「洞結節」の故障である洞機能不全症候群と、房室結節付近での故障である房室ブロックです。

 あなたのお父さんはたぶん重度の房室ブロックと思われます。電気的興奮が途中でブロックすなわち遮断されるため、通常よりも脈拍数が少なく、しばしば長く心拍動が止まるため脳に血液が行かなくなり失神してしまうのです。

 Q:なぜそのようなことがおこるのですか。

 A:他に基礎疾患があって続発性におこったり、薬の副作用などでおこる場合があります。薬の副作用の場合には、薬の中止により自然に治るのが普通です。まれに先天性房室ブロックや心臓手術のため不可避的に生ずるものもあります。

 しかし、たいていは原因不明というか、刺激伝導系の炎症、変性破壊、細胞老化がこういった故障をひきおこすと考えられています。だから、根本的に治すことは今のところほぼ不可能なのです。

 A:薬か何かでは治すことができないのですか。

 Q:薬物を使用することはありますが効果が不確実で副作用もこわいので、あくまで緊急時の一時しのぎであったり、ペースメーカー植込みまでの橋渡しとして行うだけです。

 A:ははぁ、ここでやっとペースメーカーの登場というわけですね。(金秀樹院長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2005.6.24]