〈みんなの健康Q&A〉 心臓ペースメーカー(下)−原因疾患 |
Q:前回は心臓に電気の線が走っているということを教わりました。これが故障すると心臓にペースメーカーを入れなければならないのですね。 A:いやいや、障害の程度によってペースメーカー植込みが必要かどうか決まるのであって、なんでもかんでも手術が必要というわけではありません。 まず洞機能不全症候群ですが、心拍動が何秒間か止まったり、脈拍数が減少することにより失神、痙攣、眼前暗黒感、息切れ、易疲労感などの症状を生じた場合に適応となります。また、心臓の働きが低下して循環不全を起こし、むくみや呼吸困難をきたした時も早急に手術が必要です。 Q::徐脈による明らかな症状が認められれば、文句なしにペースメーカー植込みが必要だというわけですね。 A:房室ブロックの場合も同じです。先に述べたような臨床症状を有する方はすみやかにペースメーカー植込みを施行しないと、いつまたひっくりかえるかわかりません。 そのほか、徐脈性心房細動、神経調節性失神などといった疾患もペースメーカーが必要になることがあります。 症状がなくても、あっても症状との関連が明確でない場合でも、原因がどうであれ心停止3秒以上または心拍数が1分間に40未満であれば臨床的にはペースメーカーを考慮します。 Q:無症状ということもあるのですか。 A:人によって自覚症状に差はあります。ただし、一瞬気を失っても自覚しない人がいるので、近くの人からも話を聞く必要があります。 Q::ところで、ペースメーカーの大きさって、どのくらいですか。 A:本体と電極からなっています。本体は心臓を興奮させる刺激を発生する装置と電池からなっていて、昔はたばこの箱ぐらいの大きなものもありました。今はずいぶん小さくなって、だいたい楕円形をしていて、最大幅5センチ程度、厚さ5〜7ミリで、重さは30グラム前後です。電極は電気信号を伝える電線のようなもので、心臓の電気的興奮を感知する経路と電気的刺激を心臓へ伝える経路の両方の役割を果たします。 Q:ペースメーカー植込み術というのは、どのような手術なのですか。 A:特殊な事態をのぞいて大人の場合は、心内膜電極といって心臓内から心臓の筋肉に接着させて使用する電極を用います。手術方法は、左右どちらかの前上胸部に、局所麻酔で皮膚切開して本体を収め、心腔内に挿入した電極と接続するという手順です。困難なく進めば約2時間ほどで終了し、この間患者は覚醒していますので、術者とおしゃべりもできます。 Q:いちばん問題となる合併症はどのようなものですか。 A:電極線を静脈に入れる際に肺を破ってしまい、気胸というのですが、肺が縮んでしまうことがあります。しかし何といっても最もいやなのは細菌などの感染です。なぜかと言うと、この手術はペースメーカーという異物を体内に入れるわけですから感染を生じやすく、いったん発症したら菌が全身にまわる危険性があり、せっかく植込んだペースメーカーを取り除かなければなりません。 術後に心内の電極の位置がずれて心臓との電気信号のやりとりがうまくいかなくなったときも、またはじめから手術をやりなおさなければなりません。 Q:ペースメーカー植込みをした人が日常生活で注意しなければならないことはどんなことでしょう。 A:術後1カ月以上たてば、本体・電極ともしっかり固定されるので、とくに運動制限をする必要はなく、旅行・車の運転・着衣も自由にしてもらってかまいません。 Q:電化製品には近づかないほうがいいのですか。 A:テレビ、ビデオ類、冷暖房器具・衣料、電子レンジ、パソコンなど使用してもさしつかえありません。 避けなければならないのは磁石や磁場を生じるものです。たとえば、医療上で用いられる核磁気共鳴装置(MRI)や電気メスなどです。磁気を生じる装飾品や針治療も避けたほうがよいでしょう。 Q:携帯電話はどうですか。 A:今日、携帯電話のない生活は考えられないほどになっています。しかし、これはどうも電磁波を利用しているようなので注意が必要です。ペースメーカーから22a以内で作動すると影響をおよぼすといわれていますから、混んだ乗物内での使用は慎むべきです。また、携帯電話に文字を打ち込むのは大丈夫ですが、送信するときに磁場を生じるので、人から離れて作業しましょう。受信するときも同じです。 Q:ペースメーカーの寿命はあるのですか。 A:はい。はじめ一定の電池容量を有していて、作動状況によりますが、だいたい7〜8年で電池が切れます。急に動かなくなることはありませんが、定期的な外来受診とともに、ペースメーカーの機能検査を受けてもらって、とりかえ時期を決めます。(金秀樹院長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800) [朝鮮新報 2005.7.1] |