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朝鮮解放60年−日朝つなぐ人々−E 歴史家・奈良女子大名誉教授 中塚明さん

 今、東アジアでは熾烈な「歴史戦争」が繰り広げられている。小泉首相の「靖国神社」参拝問題、歴史教科書わい曲問題、日本軍性奴隷制などをめぐって北南朝鮮、アジアから厳しい批判が起きている。

 過去の反省をしないまま、自衛隊の海外派兵を実現、米国の進める「テロぼく滅戦争」の道をひた走る日本。

 そして、隣国・朝鮮を「野蛮な体制」と決めつけ、「経済制裁」「有事での朝鮮半島での武力行使」を叫ぶ右派ジャーナリズムや学者たち。

 まさに今の状況は、朝鮮の完全制圧を目論んだ日清戦争(1894〜95)の際、当代随一の知識人・福沢諭吉が、この戦争を「文明対野蛮の戦争」と評し、朝鮮・中国の侵略を後押しした風景と重なる。

 なぜ、明治以降のゆがんだ歴史観がいまだにあらためられないのか。日朝の歴史研究の第一人者であり、近代日本の立ち遅れた朝鮮観を根底から覆す視点を切り開いてきた中塚さんは次のように指摘する。

 「日本の近代を考えるとき、客観的に見て、明治以降の朝鮮への侵略の歴史を視野に入れなくて、何が明らかになるでしょうか。政治的、経済的にはいうまでもなく、思想、文化の問題を考える時にも、日本の朝鮮侵略は避けて通れない」

 中塚さんが常に強調してやまないのは、ただうわべだけではない、過去の歴史を正確に知ることの大切さである。

 「相手を理解し、認め合い、協調して平和に生きていこうとするとき、過去のことを何も知らないのでは、その目的を達することはできない。まして侵略したのにそれを賛美したり、実際にやったことを隠したりするのでは、相手を怒らせ、不信感を大きくするだけだ」

 若い世代に向けて3年前に書かれた『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』(高文研)は「21世紀を、日本人が、とりわけ、若い人たちが、朝鮮半島をはじめとするアジアの人たちと平和に生きていくうえで、役立ってほしい」という願いが込められた一冊。

 中塚さんは01年5月、全羅北道の全州で開かれた「東学農民革命国際学術大会」に出席し、東学農民軍が蜂起した遺跡のフィールドワークにも参加した。感銘を受けたのはそこで見た「無名東学農民軍慰霊塔」である。主塔のまわりに背丈の低い花崗岩の補助塔が立てられ、無名の農民の顔、武器として使われた竹槍や鎌、また大事な茶碗などが刻まれていた。「誰でも近づいて、さわって、あるいは抱きしめたい人は抱きしめることができるようにつくられていた」ことに強い共感を抱いた中塚さん。

 過去を忘れない朝鮮半島の人々。侵略の事実さえ知らない日本の若者たち。中塚さんは00年の6.15共同宣言をテレビで見て、「こみ上げる感動を押さえることができなかった」と語る。「外国勢力の侵略に反対してたたかった人たち、戦いの中で犠牲になった人たちはもとより、心ならずも外国勢力に屈した人たちも含めて南北共同宣言に対する感慨が地底から聞こえてくるように思えた」。(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2005.7.19]