北海道初「李玉禮作品展」−同胞女性対象に「ポジャギ講座」も |
伝統の針仕事が生む高い芸術性 東京以北では初となる「李玉禮作品展」が3日、札幌市の北海道朝鮮初中高級学校で開かれた。 朝鮮学校に対する理解をよりいっそう深めてもらおうと地域住民らに学校を開放して催された「第5回アンニョンフェスタ」。その会場内で開かれた作品展には、日本人や同胞などたくさんの観客が訪れた。
兵庫県尼崎市在住の李玉禮さん(78)は在日1世。18歳になった1945年、敗戦直前の7月に夫を頼り玄海灘を越えてきた。解放後は長年民族教育に携わり、兵庫県では初の女性校長に就任。 退職後、朝鮮半島に古くから伝わる針仕事を通じて、民族の伝統文化を「在日」の後世に伝えていきたいとの思いから、近畿地方を中心に同胞女性を対象とした縫い物教室を開いた。 02年からは京都、東京、兵庫で受講生らとともに作品展を開催。大阪、京都、神戸のNHK文化センターおよびCoop姫路、神戸住吉文化センター、昨年からは、神戸朝高、神戸初中文化サークルほか朝鮮大学校短期学部(生活科)の講師としても多忙な日々を送っている。 北海道展では、李さんの手作業で創られた「麦打ち」や「農学」など約100体の人形とポジャギ、小物などが展示された。
森山ゆうさんは「長年アメリカで暮らしていた。たくさんの韓国の方と知り合い、朝鮮のことをいろいろと教えていただいた。とても興味深く大好きになった。私も人形を作っている。このような生命感あふれる人形を見せていただき大変うれしくなった。私も自分の物を発表できるようがんばる」と感想を記した。 翌日、同校では、李さんを講師に招き「ポジャギ講座」が開かれた。 講座には、同胞女性、学生など10代から70代まで35人が参加した。 「手作りキット」が配られ、袋の中から小さなモシ(苧麻)と台紙を取り出す。学生たちはしおり、一般女性は針山がこの日のテーマ。
李さんはゆっくりと、「布に対して針は直角、縫った糸は斜めに出るように…」と、参加者たちの手を取り丁寧に教える。 「2ミリなら2ミリの間隔を保って。間隔を同じにしないと仕上がりがでこぼこの子どもの歯並びみたいになるから」 細かな作業に、参加者の口数は少なくなった。 札幌市の宋京子さん(51)は朝鮮の服飾物に興味があり本を見ながら独学で10点もの小物を作り上げた。「実物を見る機会が少なくて、どうしてもパッチワークのようになってしまう。パッチワークとポジャギは似てても違う。李先生に少しでも近づけるようがんばりたい」。
゙純姫さん(47)は、李さんの講座を受けるため、釧路から5時間もかけて泊りがけでやってきた。「釧路は同胞が少なくてサークルが作れない。朝鮮文化に興味があり、『イオ』の特集を見てチャレンジしたものの失敗した。この機会に李玉禮先生に学びたいと思い楽しみにやってきた」と話した。 李さんの話には朝鮮の歴史や文化が込められている。「封建社会で女性は徹底的に人間として扱われなかった。幼い頃から子守りや畑仕事、機織り、女中奉公に精を出し、嫁いでは厳しい姑のもとで野良仕事や針仕事に明け暮れた」。 針仕事は朝鮮女性の涙の文化だ。一針一針時間をかけて布地を縫う間に、参加者たちは時空を超えて、李さんの話のなかに引き寄せられていった。 李明祚さん(33)は、「文化はお金では買えないもの。こうしたものは人を通じて受け継いでいかなければ。北海道では李玉禮先生のような方になかなか接する機会がないだけに、今日はとても良い経験をした」と満足そうに語った。 「北海道でもポジャギ教室を」−との同胞女性の願いを汲んで、女性同盟北海道本部では再び講座を同地で開きたいと考えている。(金潤順記者) [朝鮮新報 2005.7.25] |