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〈本の紹介〉 ベトナム戦争と平和

 石川さんはベトナム、ラオス、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ソマリアなど数多くの戦場取材や写真展「沖縄・復帰03年−1969年〜2002年の記録」などの仕事を通じて、戦争の惨禍を長期にわたって追及してきた。石川さんは、その悲惨な戦場を体験した遺族の消えることない悲しみと死者の果てしない沈黙を追い続け、死者に代わって沈黙を語り継ぎ、平和を訴え続けてきた。

 本書でもその姿勢は揺るぎない。石川さんは「ベトナム戦争後の米軍による化学兵器、枯葉剤の散布の影響による子供たちの抱える先天性異常」をずっと追及した。本書でも戦争終結30年の今、戦禍の実相と復興の軌跡、人々の暮らし、そしてなお残る戦争の傷跡をとらえる。

 本書をさらに魅力的にしているのは、人々の暮らしを女性のファッション、風俗、食文化など多彩に紹介している点である。フランス資本によるスーパーの繁盛ぶり、ハノイの街角の豪邸、高層マンションなどカラー写真を満載。

 次世代が明るく元気に育っている様子や、年々発展していく街の姿を見るたびに、石川さんの思いは、あの戦場で尊い生命を奪われた人々へと飛んでいく。

 戦争とは何か、人間性のすべてをかけた一人のカメラマンの問いが、私たちの心を熱く揺さぶり続ける。(岩波新書、石川文洋著)(粉)

[朝鮮新報 2005.8.1]