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アートンの絵本シリーズ 夏休みには朝鮮のお話を−おばけ、ファンタジー、伝統的な民話

子どもたちに民族の文化伝えよう

アートンの絵本シリーズ「韓国の絵本10選」

 暑〜い夏。海や山、プールに出かけるのも良いけれど、ときには親子で朝鮮の民話に触れてみるのはどうだろう? アートンから絵本シリーズ「韓国の絵本10選」が出版された。シリーズには、子どもたちが大好きな怪物やおばけのお話、大人も楽しめるファンタジー、そして、伝統的な民話がユニークな絵とともにぎっしりつまっている。

 選書、翻訳、解説は、南朝鮮児童文学翻訳、研究者の大竹聖美さん。大竹さんの話によると、南朝鮮では、88年のソウル・オリンピック以降、現代的な絵本が国内の作家の手で作られるようになったという。

 「この時期にデビューした一群の作家たちは、386世代(60年代生まれで、80年代に学生時代を送り、30代であるという意味)と呼ばれる人たちで、90年代初期において、彼らは、子どもたちのために『いい絵本を』と意欲的に取り組んだ。386世代の作家たちは、子どもたちに自分たちの文化を伝えたいという気持ちが強くあり、このシリーズにも独特のキャラクターがいくつも登場する」

「ふしぎなかけじく」

 @「うしとトッケビ」(文=イ・サン、絵=ハン・ビョンホ)は、術を使うのに必要なしっぽを犬にかまれてしまったトッケビ(おばけ)の子が繰り広げるゆかいなお話。トルセにたのんで牛のお腹の中で休ませてもらっていたトッケビが、「おいしい物を食べすぎて、ふとって牛の喉を通ることができなくなった」というから、さあ大変!

 A「ヘチとかいぶつ」(文=チョン・ハソプ、絵=ハン・ビョンホ)は、正しいことと誤ったことを正確に分ける神聖な動物−ヘチが、悪さをするかいぶつたちを前に大活躍。正義に強い憧れをもつ朝鮮民族の意識の源を知ることができる。

 B「くらやみのくにからきたサプサリ」(文と絵=チョン・スンガク)は、暗闇の国を明るく照らそうと、高句麗壁画にも描かれている四神に勇敢に挑みながら月や太陽にむかった火の犬が、地上に降りてサプサリとなったという物語。サプサリ犬は、朝鮮固有の犬で南朝鮮の天然記念物に指定されている。

「蚊とうし」

 C「あずきがゆばあさんとトラ」(文=チョ・ホサン、絵=ユン・ミスク)は朝鮮の代表的な昔話。ストーリーは、「ある日、おばあさんが畑で働いているとトラが、おばあさんを食べようとしました。おばあさんは、このあずきが実って、小豆粥を一杯食べるまで待っておくれとお願いをします。秋になり、おばあさんが小豆粥をお鍋いっぱいに作って泣いていると、たまごがコロコロ、スッポンノソノソ、うんちがベチャベチャ、いろいろなものがやってきて…」というもの。昔話がユーモラスな絵で楽しめる。

 この絵本は、昨年ボローニャ国際絵本原画展でラガッツイ賞にノミネートされた斬新な作品でもある。

 D「ふしぎなかけじく」(文と絵=イ・ヨンギョン)は、古典小説を題材につくられた古典ファンタジー。掛け軸に描かれた蔵の門を出入りする奇想天外な世界が楽しめる。

ハングル絵本「あかいきしゃ」

 E「蚊とうし」(文=ヒョン・ドンヨム、絵=イ・オクベ)は、他人の血をすって遊んでくらしている蚊と、まじめに生きている純粋な牛、牛を恐れているハエの物語。蚊はハエに向かって、「牛はおれにむかっておじぎをするんだぞ」といばってみせる。それを聞いたハエは、「それが本当なら一緒に牛のところに行って、それを見せてみろ!」というが、蚊もハエも、遊んでくらす似たもの同士。牛の態度が見せ所。

 F「あかいきしゃ」(文と絵=パク・ウニョン)は、ハングルがかわいらしく、親しみやすく感じられる朝鮮語の絵本。「あいうえお」や「ABC」は知ってても、「鼻匹彦」を知らないのはかなしいこと。文字を習いたての子どもと一緒に楽しく学べるおすすめの1冊。

 G「水宮歌」(こどもパンソリ絵本/CD付 文=イ・ヒョンスン、絵=イ・ユッナム)は、2003年に世界文化遺産無形文化財に指定された朝鮮の口承芸能であるパンソリの絵本。物語は朝鮮学校の国語の教科書にも登場する「トッキ(兎)伝」。海の竜王の病を治せるのは兎の肝しかないと、使いの亀をやって兎を竜宮までつれてくるが、竜王は兎の機知にだまされて、肝を手に入れることができない。パンソリの歌い手がかわいらしい子どもたちなのも楽しみのひとつ。

「ヘチとかいぶつ」

 H「パパといっしょに」(文=イ・サンクォン、絵=ハン・ビョンホ)は、現代社会の子どもの実生活に寄り添った等身大の絵本。まぶしい自然の恵みの中で、父と子がごく普通に山遊びをしているという、素直な日常スケッチになっている。

 I「私の社稷洞(サジクドン)」(文=キム・イネ、絵=ハン・ソンオク)は、近年急速に進む都市の再開発で急激に失われつつある庶民の暮らしを懐かしむ絵本。ソウルの古い町並を舞台に、そこに暮らした人々の人情、笑い、伝承遊びなどの路地裏文化が消滅していく様子を写真絵本でつくった。

 絵本は一般書店ほか、コリアブックセンターでも注文できる。1冊各1575円(税込)。

 【問い合わせ】 コリアブックセンターTEL 03・3813・9725、FAX 03・3813・7522。Eメール=order@krbook.net。

[朝鮮新報 2005.8.8]