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〈本の紹介〉 「治安国家」拒否宣言 「共謀罪」がやってくる

 「共謀罪」を含む法案が、知らないうちに準備されている。

 「行為」があってはじめて犯罪と認定されるのが刑法の大原則。ところが共謀罪は同じ団体に属する2人以上が、法律で4年以上の刑が科せられる行為について、実行しなくても、相談、話しあっただけで、最高懲役5年の罪になるというもの。対象となる罪名は約560種。考えたことを口にしただけで逮捕されるとしたら、へたに冗談も言えなくなる。

 「安全」「安心」を求め、治安を最優先させたすえにやってくるのは、密告と盗聴が日常化するゆるやかな恐怖社会−。

 思想、表現、団結の自由が危ない。知らないうちに、急速に軍事色を帯びていく日本社会。弁護士、ジャーナリスト、研究者、社会運動家たちがそれぞれの現場から、近づく治安管理社会の見取り図を提示した、抵抗へのマニフェストの一冊である。

 編著者の一人、ジャーナリストの斎藤貴男氏は、こうした問題に逸早く警鐘を鳴らし、鋭い問題提起を発信しつづけてきた。住民基本台帳ネットワーク、すなわち国民総背番号制度、盗聴法(通信傍受法)。街中に張り巡らされつつある監視カメラ網。あるいは地域社会と警察の融合をうたう「生活安全条例」「迷惑防止条例」「安全、安心まちづくり条例」などが各地の自治体で次々に制定されていく現実。「権力の意に染まない生き方を許さないために用意されているのではないか」と今の日本社会に広がる不気味な動きの本質を問う。

 21世紀の日本でなぜ、このような醜悪な法が準備されようとしているのか。

 斎藤氏はその独特な鋭い臭覚でこう断言する。「戦前・戦中の日本社会に君臨した内務省(戦後は解体されて総理府、自治省、国家公安委員会、建設省などが業務を引き継いだ)を貫いた支配者の論理である、『牧民官』の発想」から生まれたものだと。主権在民の理念とは相容れない、どこまでも封建時代の階級社会における、独りよがりの選民意識から発していると厳しく批判する。(斎藤貴男、沢田竜夫編著)(粉)

[朝鮮新報 2005.8.29]