〈みんなの健康Q&A〉 骨粗鬆症(上)−発症原因 |
Q:日本では少子化が進み、ついに人口が減少してきていると聞きました。当然のことながら高齢者人口の比率が上り、介護の問題がますます深刻化しています。日常生活動作に支障をきたし、ひいては寝たきりになる原因として骨折や骨変形が少なくないと思われます。 A:骨折や骨変形の痛みにより苦痛を強いられると、活動が大幅に制限されます。それらをもたらす疾患の代表的なものが骨粗鬆症です。 骨は絶えず破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨基質の形成と石灰化を繰り返していて、一定のバランスを保ちその形態を維持しています。骨粗鬆症とは、何らかの原因により相対的に骨吸収が骨形成よりも増加し、その結果、単位容積あたりの骨量が減少した状態をいいます。つまり、骨密度が低下し、スカスカになってもろくなってしまうのです。 Q:その発症要因にはどのようなものがありますか。 A:骨量は成長期に増大して20歳ぐらいで最大値に達し、中年期まではその値がほとんど保たれています。その後減少傾向を示しますが、骨量減少速度は遺伝的因子、内的ホルモンなどの影響を受けます。その他にも、性別、初潮年齢、閉経年齢、カルシウムなどの栄養状況、身体活動、喫煙、嗜好食品、薬剤など、さまざまな因子が関与しています。 Q:たくさんの因子がからんでますね。 A:基礎疾患やはっきりした原因のない場合は原発性骨粗鬆症と分類されます。この中には若年性のものもありますが、大多数は老人性骨粗鬆症および生理が止まった女性にみられる閉経後骨粗鬆症といわれるものです。 閉経後骨粗鬆症では、骨代謝に大きな役割を担っている女性ホルモンが欠乏するため病的に骨量が減少し、骨質が劣化してもろくなり、骨折をおこしやすくなります。これに対して、老人性骨粗鬆症の病因は大変複雑で、まだ十分解明されていません。その病態に関与するとされているもののなかでも、加齢にともなう腸管からのカルシウム吸収の低下と体内カルシウムバランスの負への傾きが重要で、体の動きが少なくなることも悪い影響を与えます。 Q:思えば、程度の差こそあれ、悲しいかな、万人に起こる現象なのですね。 A:骨格を持つほかの生物にもみられる現象ですが、個人の遺伝的背景だけでなく、食事や運動などを含む生活習慣にも影響されます。 続発性骨粗鬆症というのは、薬物の副作用、および種々の内分泌疾患、膠原病、消化器疾患などの多彩な疾患により引き起こされるものをさします。最も有名なのはステロイド誘発性のものです。関節リウマチ、喘息などのアレルギー疾患をはじめ、腎臓病、血液疾患など多くの疾患の治療に使用されるグルココルチコイド製剤の長期連用、もしくは内因性グルココルチコイド過剰状態であるクッシング症候群にともなって発症します。これら以外にも数えあげればきりのないくらいたくさんありますが、糖尿病、関節リウマチに伴う骨粗鬆症がよく知られています。 Q:人口あたりいったいどれくらいの割合で骨粗鬆症がみられるのでしょうか。 A:ある統計によれば、腰椎骨密度で診断した場合、50歳以上の日本人女性の25%が骨粗鬆症とされ、日本の骨粗鬆症人口は約1100万人と推計されています。大腿骨頚部骨折を例にとると、生涯に骨折をおこす確率は50歳で13.6%と報告されています。高齢になると、女性は男性の2倍の発生率といわれています。 Q:やはり骨折が何よりも問題となりますね。 A:はい、骨粗鬆症の合併症として最も重要なものは骨折であり、これにより個人の生活の質が低下するだけでなく、それにともなう医療費の増大、介助費用、家族の負担がもたらされます。骨粗鬆症による骨量の低下は無症状で進行することが多いのですが、最終的に骨折によって痛みに悩まされ、ついには寝たきりになってしまうのです。たいていは腰などの椎体骨折ですが、患者の生活の質をいちばん阻害するのは下肢の根元の大腿骨頚部骨折です。実際、寝たきりの原因として骨粗鬆症は脳血管障害に次いで第2位となっています。 Q:腰が痛くなるのも骨粗鬆症が原因ですか。 A:腰痛とは密接に関係がありますが、骨粗鬆症だけが腰痛の原因とはかぎらないので、短絡的に決めてしまうと他の疾患を見落とすことになります。 骨粗鬆症が進行した高齢者では、転倒やしりもちをついただけで椎体の圧迫骨折を生じますが、重いものを持ち上げたときやくしゃみ、咳などの軽微な外力でも発生することがあります。また、脊柱の変形から腰痛はもちろんのこと、ひいては腹部膨満感・食欲低下といったさまざまな胃腸症状も惹起されます。(金秀樹院長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800) [朝鮮新報 2005.9.16] |