〈みんなの健康Q&A〉 骨粗鬆症(下)−予防法と治療 |
Q:骨粗鬆症はとても複雑な病気のようですが、その予防法と治療について教えてください。 A:骨粗鬆症の治療的介入の目的は、何といってもその合併症である骨折の予防です。基本的には、骨にとって良くない危険因子を除去するための生活、栄養および運動の指導を行うことが大切です。次いで病態に応じた薬物治療が考慮されますが、骨のもととなるカルシウムを補ったり、カルシウム吸収を助けるビタミンD製剤投与が基本的治療になります。これらに加えて、今日では知見にもとづいた有効薬物がいくつか開発されています。 Q:日常生活で気をつけなければならないことは何ですか。 A:思春期から生活習慣、とりわけ食生活の改善に努める必要がありますが、運動不足も危険因子となります。日常的によく体を動かし、骨に力学的負荷をかけることが正常な骨代謝を営むうえで重要であり、骨の量および質の恒常性を保つためには必須の生理的刺激と考えられています。たとえば、重力に逆らって姿勢を保持する、重力場での歩行といったあたりまえの行為でも十分です。したがって、骨への力学的負荷が減弱した寝たきり患者や微少重力環境にある宇宙飛行士は、短期間に著明な骨量減少をきたしやすくなります。これを不動性骨粗鬆症といいます。 Q:ふだん家でごろごろ過ごしていたら、骨がもろくなりやすいということですね。食生活については、どんな点に注意したらいいですか。 A:偏食をしないことが、カルシウムとその吸収を助けるビタミンDを上手に摂取するあたりまえの方法です。とくに高齢者ではカルシウムが不足しがちです。 ひとつ注意したいのですが、カルシウムの摂取には食事の摂り方がとても重要です。食事によって摂取されたカルシウムは胃酸によって溶けやすくなり、吸収されると考えられています。それゆえ、胃酸の分泌が低下している高齢者ではカルシウムの多い食品を摂取する場合、胃酸分泌を促進する意味でもほかの食事を一緒に摂ることが望まれます。最近、多くのカルシウム製剤やカルシウム強化補助食品が市場に氾濫していますが、これらはあくまで補助的なものであり、過度の依存は避けるべきです。基本はあくまでふだんの食事にあります。 Q:ただ単にカルシウムを飲み食いすればいいというわけではないのですね。それでは、効果的な食事療法について具体的にお話ししていただけますか。 A:東アジア圏の伝統的食事習慣では、カルシウムを一度に摂取できる牛乳、乳製品の摂取量が少ないうえに、しょうゆ、塩、味噌などの味付けが多いためナトリウム過剰摂取になりがちで、そのため逆にカルシウム排泄が増えるとされています。一方、はやりのインスタント食品には食品添加物としてポリリン酸塩が含まれていることが多く、これらの食品をしょっちゅう食べているとリンの過剰摂取となり、これまた尿からのカルシウム排泄を促進してしまうことがあります。 Q:最近では、われわれも以前よりは多くの乳製品を摂っているように思いますが。 A:乳製品はどうしても高カロリーで脂質が多いので、肥満やコレステロールが気になる方は、スキムミルクなどの低脂肪でカルシウムの豊富なものを利用したほうがいいでしょう。 われわれの食生活では欧米に比べ大豆製品、野菜、魚介類からカルシウムを多く摂取している傾向があります。この中でも、豆腐などの大豆製品はカルシウム吸収率も高く、骨粗鬆症や更年期障害の予防にも効果的なカルシウム源になるといえましょう。そのほか、生活習慣病全般を考慮すると、海藻類、小松菜、チンゲン菜などもおすすめです。 Q:お茶、コーヒー、アルコールなどの飲み物はどうでしょう。 A:カフェインの多飲による骨量減少も報告されているようですが、明らかではありません。適度のお茶やコーヒーの摂取は問題ありません。また、アルコール自身は骨量を下げる作用はないと考えられています。 Q:ビタミンDというのはどういうものですか。 A:ビタミンDは食物から摂取されるか、紫外線の作用下に皮膚において生成されます。詳しい説明は省きますが、ビタミンDが足らないとカルシウム代謝がうまくいかなくなり、骨吸収の亢進から骨量が減少するだけでなく、骨折の危険度が上がります。現場の治療においては、カルシウム製剤といっしょにビタミンD製剤が処方されることが多いようです。(金秀樹院長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800) [朝鮮新報 2005.10.3] |