「朝鮮名峰への旅」(16) 軽石と花崗岩が混ざり合って輝く白頭山 |
白頭山を眺めるたびに気になることがあった。それは、「なぜ白頭山といわれるようになったのか」ということである。名前のとおり白頭山は白く輝いて見える。秋が深まると、ひときわ山は白く見える。そして山が白いぶん、朝焼けも夕焼けもいっそう赤い。
白頭山を撮りはじめた頃である。山麓から道のない斜面にとりついて山頂に向かおうとしたことがあった。潅木の生えている場所は歩きやすかったが、草木がなくなると、軽石まじりの階段状の斜面となった。足を取られながら1〜2メートルの急斜面を登ると、次の急斜面が現れる。足をすくわれ、思うように上に登れない。カメラ機材の重さに音をあげ、数段登っただけであきらめて引き返した。しかしこのとき、軽石と花崗岩のこの砂礫地にいつかは入りたいと思った。 草紅葉がはじまり、天候が安定した。砂礫地に入るチャンスだ。今回は、前とは逆に山頂から麓に下ることにした。足もとにはスパッツを付け、ストックを杖とした。一日好天が続くと確信しての下りである。起伏の激しい、広々とした溶岩台地の中に入り込むのだ。体力の消耗も激しい。万一霧や雨が出て視界がきかなくなれば、月世界のような急斜面から脱出することは困難となる。
斜面を下る。一歩目から、足元が雪崩のように崩れていく。砂礫地の石の粒は細かい。大きなもので5aあまりしかない。ただ重なりあっているだけで、アリ地獄のようだ。天気が数日続いたためか、秋になって岩に含まれていた水分が抜けたせいか、細かな砂礫は軽石と花崗岩が混ざり合って白く輝き、太陽の光で乱反射している。広大な斜面に入ると、目がちかちかするほど明るくまぶしい。なるほど…遠くから見る白頭山が、白く輝いて見えるのはこのせいかと納得する。 白頭山はもともと褶曲山脈にできた火山である。何度も爆発を繰り返して形成された。その間には氷河期もあった。また大きなスプーンでえぐりとったような氷飾地形もあって、地形は複雑さを増していった。 最近では1703年頃に大爆発を起こし、多くの軽石を山腹にまき散らした。火山灰ははるか遠く、日本の東北地方にまで飛んできた。当時の白頭山は、大森林が山頂付近まで続いていた。今は厚い軽石におおわれているが、風雪雨によって、どんどん侵蝕されていく。新しく侵蝕された場所に踏み込むと、砂礫の中から枯木や炭化した木の残骸が顔をのぞかせている。山頂からわずか下った所にもそうした枯木があって、かつては山頂付近まで森林があったことを物語っている。 この季節は、初冠雪の時期でもある。(山岳カメラマン、岩橋崇至) [朝鮮新報 2005.10.7] |