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平壌、開城、朝鮮の食事情 朝鮮の人々と食品に関する意見交換

 8月末から9月初めにかけて朝鮮を訪問した。在日本朝鮮人科学技術協会の仕事で食品研究に関する意見交換を平壌と開城でいくつか行った。

 日本の外食産業における民族料理の普及とその人気ぶりを取り上げたが、とくにキムチの急速なる消費増加の特徴については、調査データを基にした説明にはかなりの関心が集まった。

キムチの消費

豆腐チゲとご飯

 日本でのキムチの消費量が20年前と比較すると10倍以上になったということ、漬物業界でのトップ商品であること、いまや「日本のキムチ」になってしまっていることについて、具体的な数字を知ったとき、研究者たちは驚きの色をかくせなかった。

 キムチたるものの内容がいわゆる「本格キムチ」というよりも浅漬タイプキムチが主流になっていることについては、すでに把握していたという。それは中国がキムチ生産を始めた頃に朝鮮から専門家たちを招待して技術指導したいきさつがあって、本格的なキムチ作りをコーチしても受け付けなかったということがあったからだ。いまや中国産キムチがソウルや東京で消費される時代であることの認識は持っておられたようだ。何とか本格キムチを生かしたもので「外貨稼ぎ」をしたいのだが…、という意図が感じられた。

 キムチは民族の創造食品であり、知恵の結晶であるだけに、南北の研究成果を生かした製品作りができないものか、と私は実感した次第である。

酒事情

山菜もたっぷり

ソウルでも人気の大同江ビール

 大同江ビールとマッコルリを味わった。大同江ビールは数年前に新しく生産されるようになったビールだが、味わったのは今回が初めてであった。

 日本を発つ前の朝日新聞で、ソウルに輸出された大同江ビールに人気が集まっているということを書いた写真入りの記事を読んでいた。

 高麗ホテルの最初の夕食に大同江ビールが出たときは、ビール好きの私はうれしかった。高麗ホテルのビールは竜城と大同江の2種だということだが、価格は竜城の方が少し高いようだ。竜城ビールは泡の出がよくないので知られている。大同江は泡がしっかりと出ていたし、ホップの味も少し強めであるが、はっきりと出ており、私としては大同江のほうが好みに合うようであった。人を招いての食事会では大同江を指定して味わった次第である。

 平壌駅から平壌大劇場に向かうストリートの左側には大同江ビール直売所があった。生ビール専門で、各家庭で月に5リットルが買えるようになっているという。350ミリリットルの缶ビールに直すと14本くらいで、ビール愛好家にとってはそこそこ楽しめる量といえようか。

 民族の伝統酒であるマッコルリも味わった。私が発酵食品を専門にしているということで、2種類のマッコルリが届けられた。南からの訪問者や金剛山観光客用に商品化されたものらしく、一般にはこれから出回るらしい。味は酸味が少しするタイプのものと、そうでないものとがあった。私はむかし、オモニがよく作ってくれた酸味のするマッコルリの味がなつかしく感じられた。

ホテルの朝食

 高麗ホテルのビュッフェ形式の朝食が気に入った。外国人の宿泊客が多いということだろうがパン、牛乳、コーヒー、果実、生野菜、卵の目玉焼き、スクランブルエッグと洋食スタイルが整っていた。

 さらに私が気に入ったのはご飯とお粥、塩辛、キムチ、魚、肉料理とバラエティに富んでいることである。とりわけ粥は毎日出る白粥のほかに小豆粥と緑豆粥が交代で、常に2種類の粥が準備されていた。私は白粥は取らず小豆粥、緑豆粥をお代わりをしながらおいしくいただいた。塩辛をおかずにした粥の味は忘れがたい。

 食は文化である。久しぶりに訪れた朝鮮のいくつかの食べものに接してあらためて思った次第であ る。(鄭大聲、韓国食文化研究所所長)

[朝鮮新報 2005.10.21]