「朝鮮名峰への旅」(17) 溶岩台地に無数のヒダ 斜面に光線、不思議な世界 |
11月に入り、北海道や東北地方から紅葉前線が少しずつ南下しているというニュースが流れたと思ったら、もう雪の便りが聞かれるようになった。そういえば私が訪れた1991〜2年ごろの白頭山は、11月となるとすっかり冬支度が整い、長く厳しい雪山の始まりを告げていた。 白頭山へ続く道も、無頭峰宿舎を過ぎると吹き溜まりに雪が積もって、車で入るのは難しくなる。車は、せいぜいホテルから山麓周辺を撮影するときに利用するくらいだ。 ホテルに宿泊しているときに寒波が到来した。外に出ると風花が舞っていた。青空がどこまでも広がっている。時々、白頭山の方面から雲がちぎれて飛んでくる。動きが早く、次第に小さくなって消えてしまう。この雲によって生まれた雪が、ちらちらと舞い落ちてくる。白頭山は、冬の訪れで雲の中にある。
次の日、風が弱まったのを見て、無頭峰へと向かう。車を宿舎から少し入ったところに停め、潅木をかき分けて緩やかな斜面を登る。キバナシャクナゲの葉は、寒さと乾燥のためにくるりと丸まっている。美しかった落葉松はすっかり葉を落とし、斜面には陽がサンサンと照りつけている。日中になっても、気温は0℃より昇ることはない。日陰では霜柱が10センチほどの高さに成長しており、もう溶けることはない。 無頭峰の山頂付近まで登ると、白頭山の溶岩台地が雄大に広がっていた。台地の斜面は無数のヒダが刻まれ、ヒダの中に昨日降った雪が詰まっている。夕方になると光線が斜面に当たり、不思議な世界を形づくっていた。 無頭峰から歩いて、天池へと向かう。10数キロの道のりだ。カメラ機材や寝袋や食料など、大きなザックにつめてのキャラバンとなる。ザックの重さにあえぎながら、天池湖畔の山小屋にやっとたどり着く。たっぷりと汗をかいたが、大陸からの風は冷たく、瞬く間に体が冷えこむ。さっそくオンドルに火を入れる。床が心地よく暖まり、快適な山小屋生活が始まった。 翌朝、湖畔に立つと、昨日までの好天と打って変わり、雪雲が重たげにカルデラ壁を覆っていた。一瞬、朝の光が差し込み、スポットライトのように新雪に当たったが、あっというまに日差しはなくなり、降雪の一日が始まった。(山岳カメラマン、岩橋崇至) [朝鮮新報 2005.11.20] |