第34回 在日朝鮮学生美術展から 多彩なアイデアや工夫 歴史や環境問題をテーマにした作品も |
今年も、各地ウリハッキョから寄せられた約1万点の応募作品を一堂に集め審査が行われた。審査員は日本各地の朝鮮学校の美術教員、講師たちによって構成され、自校生徒以外の作品を推薦する。目の前にたくさんの生徒たちの作品を置き、議論しあう教育研究の場は、各地の学校で働く教師それぞれの悩みや問題点を克服する場にもなっている。 美術を、人間教育として捉えるためにさまざまな努力がなされてきた。生徒たちの発想力を生かし、表現したいものを十分に吐き出せるような素材や材料、技法を駆使すること。在日の厳しい現実生活の中でありのままの自分を受け入れ、自己存在の確立や明日への希望を見出すための「内なるもの」への働きかけなど。そうした積み重ねにより、美術展も次第に様変わりしてきたと言える。
今回の東京展では、平壌、ソウル、日本のウリハッキョ児童たちの、「メッセージ入り等身大自画像」が特別展示された。会場を訪れた生徒たちは記念撮影をしたり、統一への切なる思いをカードにしたためた。 また、愛知や神奈川などで長年続けて開催している日本学校生徒との合同展は、作品交流にとどまらず、生徒、教師の心のふれあい、教育交流として成果を挙げている。 今回の作品を通して言えるのは、初、中級部の作品には生活画にもイメージ画にも、一枚の絵にいろいろなアイデアや工夫が詰まっていて、素材や技法に負けることなくのびのびと描ききっている作品が多く、生活の充実感が画面にあふれていたことだ。また、なかには在日の歴史や環境問題に目を向けた作品などもあり、授業中にじっくり取り組んだものも少なくない。中高生は思春期、青年期の多感で複雑な時期の視点で生徒なりにしっかり考え、物事の本質をまっすぐ見つめようとする姿勢がうかがえる。立体作品においては材料と大きさの際限を取り払うことで、より表情が豊かになったと言える。
各高校で選択科やクラブ活動などが充実し、とくに神戸朝高で絵画、写真、服飾など生徒の将来の希望や進路に直結させた分野別指導が行われているのは新しい美術教育の形態として注目されている。 このように34年の歳月と共に新しく移り変わる時代の中で成長してきた在日朝鮮学生美術展を通して、60年の歴史を持つ民族教育の輝かしい業績と、それを引き継ぎ大きく羽ばたく生徒たちの明るい未来を確信することができる。これからも全国の美術教員の活躍を期待するばかりである。(在日朝鮮学生美術展中央審査委員) [朝鮮新報 2005.11.27] |