〈本の紹介〉 「日韓近現代史」 ジェンダーの視点からみる |
1993年のウィーン国連人権会議では、「女性の権利は人権である」ということが世界的に認知され、2年後の95年の北京女性会議では、世界中から集まった政府、民間あわせて4万人を超える女性たちが「21世紀に向けて女たちのエンパワメントを」と、熱く燃えた。エンパワメントとは、「力をつける」という意味だ。 女たちが「力をつけた」結果生まれたのが、本書である。その力はいったいどんな力なのか。2000年に国際女性戦犯法廷を主唱し、実現させたジャーナリストの故松井やよりさんの言葉を借りれば「それは、支配したり、侵略したり、征服したり、搾取したり、管理する力、権力ではもちろんない。それは、自分自身で考え判断する力、女性であることに自信と誇りを持つ力、自分の人生を選び取る力、差別され虐げられた人々と痛みを分かち合う力、生命や自然をいとおしむ力、圧制や破壊と闘い社会変革のために行動する力、新しい文化と価値を創造する力」だというのだ。 まさに、そんな力に満ちあふれる女性たちがふえ、その力をあわせるときに、途方もなく巨大なグローバルな力に抗して、歴史を前進させることができる。 本書はジェンダーの視点からみる日本と朝鮮半島における近現代史であり、日本と南の女性たちが初めてともにつくった歴史書だ。「乙巳5条約」から100年、日本の侵略戦争が終わって60年という節目に、「長い間疎外されてきた『女性の眼』から歴史を捉えてみようと試み」(尹貞玉、梨花女子大学教授)、生まれた画期的な共同歴史教材でもある。 内容は、1章 日本帝国主義の拡張と「韓国併合」、2章 3.1独立運動と社会運動の展開、3章 日本帝国主義期民衆生活の変化、4章 戦時動員と日本軍「慰安婦」、5章 日本敗戦と朝鮮半島分断、朝鮮戦争、6章 ウーマン・リブと社会運動、7章 女性運動と「女性国際戦犯法廷」と多岐にわたる。また、「日帝強占期の戸主制度の移植」などの項目を設け、天皇制と家制度、民法と戸籍法、家制度と女性などの関係性について細かく説明しながら、日帝がいかに朝鮮女性を奴隷的に支配しようとしたかを記述していて、読み応えがある。 本書はこの10数年にわたって、日本軍性奴隷制問題で人権回復のために、手を携えてきた南と日本の女性、市民が共同し、研究者らの参加を得て、発刊に至った。南側の編集責任者は日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会委員でもある鄭鎮星・ソウル大学社会学科教授、日本側責任者は女性史研究者の鈴木裕子さん。本書誕生に関わった多くの人々の労を多としたい。(日韓「女性」共同歴史教材編纂委編)(朴日粉記者) [朝鮮新報 2005.12.5] |