〈3、4、5、6年生対象−新保健教科書(初級部)を活用しよう(下)〉 体と心の変化、応急処置法など教える |
授業を行うにあたっては、学習内容の注意点と到達目標をきちんと知っておく必要がある。以下、項目別に概説する。 健康な生活
@健康増進のため、運動、休養、食事などの調和がとれた生活についての知識をもち、規則的な生活を送るように指導する。A健康的な生活を送るためには、体だけでなく生活環境も清潔にするとともに、部屋の明るさや換気なども重要であることを教える。B体の成長と健康増進にとって好ましい食べ物、あるいは害となる食べ物について知り、模範的で正しい食生活習慣を養う。C5大栄養素について教える。E日常生活のリズムについて話し合う。 これらは教える側の大人にとっても重要な問題となる。なぜなら、将来の問題として、糖尿病、高血圧などの生活習慣病とおおいに関係があるからである。 食事に関しては、栄養面で優れている朝鮮料理の効用について知識を深めることがすすめられる。朝鮮料理には健康に良いとされるごま、とうがらし、にんにくなどがよく使われ、野菜がふんだんに取り入れられていて、キムチをはじめとする発酵食品も豊富で、栄養学的にとても好ましいといわれている。 こういった知識を教えることで、いってみれば食事を通して民族文化を実感することができ、自然と民族的素養を身につけることができるようになる。 体の発育と心の発達
@体の成長と発達のためには、調和のとれた食事、運動、休養および睡眠が必要であることを理解させなければならない。これは、健康な生活に関する教育と連動するものである。A年齢によって体に違いがあり、思春期になれば女子は月経が始まり、男子では性器の変化、精子形成などがみられ、体がだんだん大人に成長していくということを教える。体の変化を病的なものと勘違い、誤解する場合があるので、声変わり、女子の急激な体の変化など、前もって教える必要がある。もちろんこれらの変化には個人差があることをかならず言いきかせなければならない。このような保健学習は、性教育の準備段階と位置付けることができる。B年齢と体の変化にしたがって精神的状況も変わっていき、異性に対する関心も持つようになったりして、心が不安定な状態におちいりやすいということを認識させる。C体と心は密接な関係にあり、精神心理的原因で起きる病気について知り、お互いの心を理解しあい、助け合うように指導する。具体的には、拒食症、肥満、頭痛、ひきこもりなどがそういったものにあてはまる。 高学年になると、思春期をむかえ、自立心、異性に対する感情、その他いろいろな悩みを感じるようになる。これらは避けて通ることのできない問題である。 事故の防止と応急処置法 @学校内でおこる事故の原因とそれを防止するための注意事項を学び、安全な学校生活を送れるように指導する。学校内ではふざけてした行為でケガをすることが多い。A通学路での一般的事故または交通事故を防止するための注意事項を知ったうえで生活できるよう指導する。とくに低学年では交通常識を知らずに注意散漫になりやすい。その他、自転車の2人乗り、無灯火、携帯電話の使用などの危険性を知らしめる。B事故が生じたらすぐに適切に対処できるように、外傷、打撲傷、やけどなどの簡単な処置法を学び、実践できるようにする。実際に多いのは外傷以外にも突き指、鼻血、火傷などがあり、まちがった処置をすると、かえって悪化することがある。 病気の予防
@生徒がかかりやすい病気とその予防法を学び、生活の中で抵抗力を養い、病気を予防するために努力するよう指導する。初級部生徒によくみられる代表的疾患にはかぜ、熱射病、花粉症、インフルエンザ、胃腸炎などがある。A病原微生物が原因となっておこる病気を一般的には感染症というが、これらの正しい知識を得させる。B感染の経路、様式について理解させることにより、予防に対する心構えが自然と身につく(表1)。C学校生活で最も問題となるかぜ(一般の感冒)とインフルエンザについて、その違いをよく理解させる(表2)。D不適切な生活習慣や生活環境によって生じる病気とそれを予防するための正しい生活習慣について知らしめ、実践させる。E高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病という概念を理解させ、その予防のため子どもの頃からつりあいのとれた食生活と規則的な生活が重要であるということを教える。F酒、たばこ、薬物濫用(シンナー、覚醒剤)などがおよぼす悪影響を教え、防止するようにする。 まとめ 今回の講演会に対する現場からの意見や感想をもとに、今後さらに学校保健教育が充実したものとなるよう議論と実践を積み重ねていく必要がある。(金秀樹、あさひ病院内科) [朝鮮新報 2005.12.9] |