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〈みんなの健康Q&A〉 痛風−食生活指導

 Q:年末年始は忙しくて運動不足になりがちなうえ、飲酒の機会が多く、痛風の発作が心配だという人がたくさんいます。

 A:痛風になると、病変関節部分が赤く腫れて、その名のとおり風にあたっても痛むというほどの激痛発作におそわれます。これは高尿酸血症といって、尿酸の産生過剰、排泄低下などさまざまな原因で血液中に尿酸という物質が多くなり、それがもとで主に関節部に尿酸の結晶である尿酸塩がたまり、そこに急性関節炎が生ずるからです。いちばんおこりやすい場所は足の親指の付け根で、足全体や膝にもおこります。

 尿酸のもとになる物質は、体内の新陳代謝がおこなわれる結果、細胞の核内でできるプリン体というものです。

 Q:男性に多いと聞きましたが。

 A:40歳以上の肥満型の人に発症しやすく、圧倒的に男性が多いのが特徴です。女性の30倍の発症率とされています。

 Q:生活習慣にもおおいに関係があると聞きましたが、最近は20〜30歳代の若い人にもしばしばみられるそうですね。

 A:1970年代以降にかなり増加し、成人男性の20%くらいが高尿酸血症と診断されているという疫学的調査もあります。やはり食生活の変化がかなり関与しているようです。尿酸排泄障害がある人に飲酒、高プリン食など、尿酸合成亢進を招く諸因子が加わるとたちまち高尿酸状態となり、関節に結晶がたまりやすくなります。ちなみに1人前あたりのプリン体含有量の多い食品として、あんこうきも、かつお、まいわし、くるまえび、牛肉ヒレ、まあじ干物、豚肉ロース、豚肝臓などがあります。意外かもしれませんが、牛乳と鶏卵にはプリン体が含まれていません。

 薬の副作用でも高尿酸血症をきたします。 代表的なものは、尿をたくさん出すための利尿剤、一部の抗腫瘍薬、エタノール、サリチル酸製剤などです。だから、やたらと利尿剤を服用すると痛風の危険があるのです。

 Q:基本的にはプリン体の少ない食品を食べるようにすれば予防になるというわけですね。

 A:高プリン食は血中尿酸値を上昇させる一大要因であることはまちがいありません。そのため、痛風の食事指導として古くからプリン体制限が強調されてきました。しかし、現実的にはプリン体制限は困難を伴います。

 Q:それはいったいどうしてですか。

 A:プリン体といってもみなさんピンとこないでしょう。制限するといっても、対象となる食品のプリン体含有量がわからないことが多いので、いちいち調べるのが大変です。また、食品中の主要なプリン体の1つであるイノシン酸は旨味の成分であり、プリン体制限は食事の旨味を減じることになります。誰だって、やっぱりおいしく食べたいですからね。3つ目の問題ですが、プリン体制限を強調すると、量的な制限は必要がないと誤解してしまいがちです。これでは肥満対策がおろそかになってしまいます。

 Q:なるほど、たしかに言われてみればそうですね。

 A:実はこういったことをふまえて、痛風の予防、改善のためには、今日ではプリン体制限そのものよりも肥満の是正のほうを優先すべきであると考えられています。

 Q:ということは、食事のカロリー制限と運動療法が大切だということですね。

 A:そういうことになります。太っている人が体重を落とすと、たいてい尿酸値が下がります。これは疫学調査でも明らかにされた事実です。ただし、食事を急に極端に減らすと、尿酸値が上ることもあるので、減量はゆっくり行わなければなりません。

 また、ふだん運動不足の人が激しい運動をすると、水分が急激に失われて痛風発作を誘発することがあります。水分を十分にとり、尿酸を尿といっしょに排泄しやすくすることが大切です。

 Q:痛風患者には飲酒は禁物と言われていますが、どうしてですか。

 A:飲用アルコールすなわちエタノールが代謝される過程で尿酸の産生量が増す、エタノールの代謝で産生された乳酸が尿酸の腎排泄を抑制する、アルコール飲料中にたくさん含まれるプリン体が体内で代謝されて尿酸になる、という複数の機序から飲酒がすぎると血液中の尿酸が増えます。俗にいう「酒に強い人」に痛風が多いのは、単純に飲酒量が多いからと考えてよいでしょう。アルコール飲料の中でもとくにビールはプリン体含量が多く、実際に尿酸値を上昇させる作用も強いので、ご用心を。

 Q:そのほかに食生活で注意しなければならないことはどんなことですか。

 A:大部分の尿酸は腎臓から尿中に排泄されるため、尿量の減少は尿酸値の上昇につながります。尿路結石の予防もかねて十分な水分摂取が望まれます。

 また、痛風患者の尿は酸性に傾いていることが多く、酸性で溶解度が低下する尿酸やシュウ酸カルシウムによる尿路結石ができやすくなっています。したがって、海藻類や緑黄色野菜のようなアルカリ性食品を積極的に摂取するよう心がけましょう。

 痛風はとりあえず元気にしていても、肥満、高血圧、高脂血症といった生活習慣病危険因子をも有していることが多く、高尿酸血症そのものの影響もあいまって、将来、狭心症や心筋梗塞になる危険性が高くなります。だから、痛風は関節炎のみならず、命にかかわる事態をもたらすのだという病識を持つことが必要です。(金秀樹院長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2005.12.23]