山で元気!−涸沢ヒュッテ(長野県、2309m) |
若い頃は夜行列車に飛び乗り、山頂を制覇し駆け足で下り、その日の暮れには家に帰り、翌朝の出勤に間に合わせるという忙しい山行が日常茶飯事だった。最近は山小屋に高齢者があふれている。急がず、あせらず、ゆっくり、マイペースで山に登り、山を楽しむスロー登山が唱えられだした。
70に手が届きそうな「山楽会」の3家族6人、紅葉の美しさを求め涸沢カールを目指す。9月30日、車は名神、東海北陸道をひた走る。平湯温泉バスターミナルで、バスに乗り換え上高地に着く、2時少し前だ。横尾山荘に日暮れ前に着くギリギリの時間、ホッとする。5時起床、食事も5時。横尾山荘を6時に出発。この頃から未経験者はカルチャーショックを受けだす。起床、食事の早さはまだしも、涸沢ヒュッテで宿泊場所の狭さに恐れをなす。背を伸ばせば頭がつかえる中2階の3畳部屋に6人が寝る、さらにあと2人入る可能性があると聞き、すっかりショゲている。 唯一の救いは、アルピニスト憧れの涸沢ヒュッテのバルコニーで大ジョッキの生ビールの乾杯。周辺のナナカマドが真っ赤に染まり、ダケカンバが紅葉している。ガレ場のテント場には、赤、黄、青のテントの花が咲いている。ガスが深く、穂高連峰の峯々は姿を隠しているが、時折強風がガスを吹き飛ばし、奥穂高がチラッと姿を見せる。女性たちは小雨降る中、パノラマコースを散策し、嬉々としている。3日目、5時起床、雨具の準備を完璧に整えた一行はヒュッテを後に、雨の下り路18キロをひたすら歩く。7つの露天風呂で有名な平湯温泉森の湯に直行、疲れた体を浸けた。後はにぎやかな夕食時の総括。36キロの山道を歩きとおし、涸沢カールの見事な紅葉を見ることができた達成感に酔いしれている男性たちは、43年前の朝大卒業時の笑顔に戻っている。彼らの言うことも一昔二昔前の大言壮語。「抗日遊撃闘争、回想記、苦難の行軍の勝利の凱旋気分だ」という。大げさすぎるョ。(朝大5期生「山楽会」幹事、金相煥) 【コースとタイム】上高地〜徳沢園〜横尾山荘(泊)〜本谷橋〜涸沢ヒュッテ(泊)、復路同、36キロ 往復13時間30分。 [朝鮮新報 2005.10.21] |