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山で元気!−英彦山(福岡県、南岳1999m、中岳1200m)

天気は最高、紅葉も最高

 英彦山は山岳宗教のメッカとして歴史は古く古代朝鮮とも関係が深い。秋は晩秋に向かって走っていた。今回の山案内は、酒を百薬の長と信じ、自分の妻と同じくらい心から愛している鵤さんに任せた。

 山道を20分くらい歩くと墓の掃除人に出会い、「この道は墓場に行きますよ」と言われみんながっくり。道案内の鵤さんはケロリとおどけて「来たのは20年前、頂上に登ったのは小学生のとき」と言い、それを聞いた私は、「おいおい、冗談はよしてくれ」と言いたくなり内心不安になった。

 来た道を引き返すと今度は大きなスズメバチの巣が頭のすぐ上に見えハチの大群がたむろして怖かった。そんなヒヤヒヤする場面もあったが天気は最高、山の中腹まで来るとコマドリが澄んだ高い声で鳴き気持ちよさそうにさえずり私たちを森の奥に誘いこんだ。

 古代の森にタイムスリップさせ自然の美しさ、尊さを教えながらも自然は人間だけのものじゃない…自然を破壊しているのは人間だと忠告しているようにも聞こえた。

 鬼杉で昼食にした。ソンピョン、白菜キムチ、カクトゥギ、ジャガイモチジミなどみんなで分けて食べた。

 元気を取り戻した仲間は、樹齢1200年の鬼杉にこれからの健康を願い、登山道をふたたび歩み始めた。

 頂上に近づくにつれて道は険しく、仲間の荒々しい息遣いが冷たい空気に伝わっていくのを感じる。それでもみんなは岩に打ち込まれている鎖につかまり上へ上へと進む。

 それを下から眺めていた私は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を思い出した。

 登山は楽しい反面、危険とも隣り合わせだ。もしも鎖が切れるようなことがあれば、仲間たちは谷底にまっさかさまに落ちていく。想像すると背中に冷やりとするものが流れ、全身に緊張が走る。体は汗でビショビショ、足はガタガタ。最後の力を振り絞り、中岳、南岳を目指す。着いた!! やった!! 安堵の深呼吸。鵤さん、迷ガイドご苦労様。(多久市 朝日登山クラブ 沈成達)

 【コースとタイム】多久インター〜登山入口〜鬼杉〜南岳〜中岳〜下山〜駐車場、8.7キロ、8時間30分

[朝鮮新報 2005.12.2]